【お題】減らない酒量…深酒で人に迷惑をかけないかが心配
7月から在宅勤務がとけ、毎日出社している。通勤は大変だが、仕事は会社の方がやりやすい。でも、一つ問題が。在宅勤務で増えた酒量が戻らない。さらに増えた感じもある。接待や飲み会はほとんどなく、残業がなければ8時には帰宅。家なら外で飲むより安上がりで、持て余した時間は飲むばかり。飲酒で転落した芸能人のニュースは人ごとではないが、60のひとり身だけに止めてくれる人はいない。体を壊すのは自業自得。それより何か迷惑をかけないか心配で……。
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長屋で居職、樽と桶作り職人の聡助。
「本所深川なら、聡助に勝てる職人はいねえ」
ひとり身で、仕事場の板の間脇に積み重ねた布団が、寝床だ。
朝めしは長屋の女房連中が交代で拵えた。
「聡助さんのおかげで、長屋のみんなが飛び切り工合のいい樽を、暮らしに使えるんだもの」
住人のだれもが聡助を慕っていた。寡黙で仕事ひと筋、女出入りもない。人柄のよさも申し分ないが、ただひとつ、深酒だけが聡助の傷だった。