米ハワイ州が日本からの観光客も「隔離免除」でどうなる?

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 ハワイ州全土で外出禁止令(Stay At Home Order)と14日間の自己隔離が開始され、半年。コロナと共に七転八倒してきたハワイを振り返る後編です。

 半年を振り返る上・中・後編と書き始めたこの記事ですが、今月10月15日にようやく事前検査プログラム(pre-travel testing program)が施行されました。これはハワイ到着前の72時間以内に検査を受けて陰性が確認されれば、到着時に課される2週間の自主隔離が免除されるというものですが、もう何度も延期になっていた上、13日になっても各島で議論が続いていたので今回も延期になるのでは、とみられていました。

 しかしサラッと開始され、オアフ島はさほどの混乱もなかったようですが、ハワイ島ではハリー・キム郡長がその有効性を疑問視し、難色を示していただけあり導入は厳しいというのが大方の見方でした。キム郡長の施策としては経済再開よりも島民の安全が最優先のため、脆弱性が指摘される今回のプログラムは承服しかねるものだったようです。そのため州知事と各郡長の間で直前まで議論が続いていましたが、島によって異なる措置が取ることで決着がつき、急転直下、施行が見切り発車されました。

■ミネソタ在住の義両親がハワイ島へ

 このプログラムを利用して、夫の両親がミネソタ州から突然、来布することになりました。こちらの義両親、私が今年2月に出産した3日後(アメリカの病院は早くて12時間、長くて2日で退院)にも突撃しており、そのフットワークや腰の軽さというかなんというか、尻の軽さは負けない私でも脱帽最敬礼なのですが……。

「来週、ハワイ島に行っていい?」と夫に電話がかかってきたときは、事前検査プログラム導入に暗雲が立ち込めていたため“キム頼み”というか、イノセントに「プログラムは開始されなさそうですから無理そうですね(キョトン顔)」と申し上げたのですが、この西部開拓者精神というか、見上げたゴーウエスト精神。次に彼らから連絡があったのは「ハワイ島、着いたよ」でした。

 その15日は夫の誕生日で、部屋を飾りつけてランチを持ってビーチピクニック(プレゼントは2時間フリータイムの権利が与えられるサービスチケット12枚綴り)する予定だったのですが、突如として大掃除&ゲスト用ベッドシーツ諸々の洗濯に追われることとなりました(夫が)。しかしこの事前検査プログラム、なかなか一筋縄ではいかないものだったようで……。

 まずこちらのプログラムは、ハワイ州当局から認定された14の医療機関や薬局(10月22日時点)に事前予約して到着72時間前に検査をします(以前は出発72時間前になっていましたが、機内で検査ができる航空会社もあるので到着72時間前になりました)。今回はウォルグリーンのドライブスルーでRapid Testと呼ばれる迅速抗体検査(鼻の粘膜を擦って提出するという簡単なタイプのもの)をしたそうです。

 これは簡単で、しかも24時間以内に必ず結果がわかる“保証”がついているという「アメリカどうした」な顧客目線のサービスなのですが、2時間で結果が出たそう。その結果をハワイ州のウェブサイトに登録し、24時間前までに健康調査票を記入します。これは9月1日からハワイ州に到着するすべての渡航者に新しいハワイ州トラベル&ヘルスフォーム(Mandatory State of Hawaii Travel and Health Form ※1)が導入されたもので、渡航24時間前までに新規アカウントを作成して事前登録をし、既往履歴や健康状態、旅行中の情報を記入することが必須となりました。

 それが終われば、あとはミネソタからロス経由でハワイ島にひとっ飛び。チェックイン時に健康に関するアンケートがあり、座席中央の席がすべて空けられているというくらいの違いしかなく、意気揚々とハワイ島に着き、義両親は夫に到着連絡の電話をしたというわけです。しかも帰りのフライトを予約していないという斬新なスタイルで、滞在期間は未定という秋の夜長のミステリー。もちろん拙宅に滞在です。こちらの義母というのが歯に衣着せぬ、裏表のない……、とても素直で竹を割ったような……はっきり申し上げてしまいますと、子育てに関するアドバイスならぬクソバイスというか、add-vice(悪弊追加)系武闘派ステップマザーで……。私が夫とこっそり喧嘩していると「My son is a wonderful person!!!」と乱入してきて場外乱闘に持ち込んだり、新生児の顔を雑巾で拭いたり、母乳最高神と、とにかく天衣無縫のフリー流儀であるため、こちらとしては「竹は、しなるから折れないんだあ」と白目で楚の歌を歌いたくなる場面が多々あるのです……。

 そのため夫に「もうなにが起きても気にしないから、その代わりルンバ s9+とブラーバと、iPhone12 Pro Maxを買うよ!!!」と気炎を吐くと、「Ofcourse, you can buy Zumba, iPhone 13, or 14, you deserve it!」(ズンバも、もちろん、iPhone13と14も買っていいよ!!!)と言っていました。ズンバはコロンビア系ダンス・エクササイズです。

 私たちは空港から30分以内のコナという街に住んでおり、「レンタカーで行くから迎えに来なくていいよ」という地獄に仏(両者同一人物)な気遣いを見せてくれたので自宅で待っていたのですが、それから1時間経っても来ないため、電話をすると検査場で身動きが取れない、とのこと。ハワイ島はハワイ州の他の島と違い、事前検査プログラムに加え、必ず到着後の空港検査を先んじて義務づけた島です(10月28日現在、撤廃が決定し事前検査のみでOKに)。

開放されるまで5時間待ち

 事前検査プログラムが導入された初日。到着後の流れとしては、まず第一関門で陰性証明書・健康情報・フライト情報が入ったQRコードをかざしてチェクしてもらうまでに1時間、第二関門のコロナ検査場で長蛇の列さらに1時間。そして結果待ちをするため芋の子を洗うような寿司詰め状態の芋寿司待合室(ノーソーシャルディスタンス)で2時間。そのうち待っている人々の間では、イライラが募ったのか「もうここから出してくれ! 2週間自主隔離をすればいいんだろ!? もう結果はいいから俺たちは出る!」と言い始める人たちと賛同する人たち、たしなめる人たち、諦めてこだま状態の人(©︎もののけ姫)たち、阿鼻叫喚の様相を呈していたら、なんと全員解放。

 え、ちょっと待って? え? そんなことある? 見切り発車というか、むしろなにかいろいろと諦めた? 「結果は登録メールアドレスに連絡する」ということで開放されたらしいのですが、丸13日たった28日時点でも連絡がないので、陽性が出た方だけに連絡するスタイルに変わったのでしょう(希望的観測)。と、この状態で皆が向かったのはレンタカー。通常であればレンタカーショップのバンが到着口で待機しており、みんなをお店まで連れて行くのですが、運転する人のみがバンに乗車可能となっており他の家族は待機。

 義父がレンタカーを借りに行き、1時間ほど列に並んだところでまた一人の女性が「空港で検査した陰性証明書がないと、レンタカーは借りられないらしいわよ」と噂し始めたから大変。伝言ゲームのように行列に伝わっていき、我先にとUberをつかまえに行く人でまた大混雑し始めます。義父はあとちょっとでカウンターに到達するところでもあり、そこで詳しく聞こうと辛抱強く待ち、カウンターで聞くとあっさりレンタカーをゲット。不安のなかに生まれるデマゴーグ効能の高さを思い知ります。

 我が家に到着した時には実に5時間が経過しており、孫にようやく会えて義両親は相好を崩し、トロけるような笑顔を見せてくれました。私も胸に熱いものが去来し、ただただ「来てくれてありがとう」というピュアな気持ちが芽生えました。犬も食わない夫婦の喧嘩にだってウェルカムだし、雑巾でもなんでも使って赤子の顔を拭いてください!!!

 今回の事前検査プログラムはアメリカ本土からの旅行客を対象にしたものでありましたが、11月16日より日本からの旅行客への適用が開始されます。先週14日に米国以外では初めて、日本の厚生労働省が認定した新型コロナウイルス感染症の核酸増幅検査(NAAT:Nucleic acid amplification testing)が認可され、これにより日本国内の指定医療機関で検査を受け、陰性の証明書があれば2週間の隔離が免除されます。ハワイを訪れる各国別渡航者割合をみても、アメリカ本土からが47.08%でトップなのに次いで、3位カナダの5.27%を大きく引き離し日本からの観光客が15.39%と2位であることを考えれば納得がいきます(出典:ハワイ州観光局)。これでハワイから日本への隔離免除がなされれば、完全なる観光再開という幸先の良い大ニュースでした。

観光客の傍若無人な振る舞いも

 しかし観光再開から10日以上が経ち、現地からは観光客の傍若無人な振る舞いが目につきすぎるとため息が聞こえてきています。まずマスクをしない観光客が多すぎて、初日から2日で警告者が4500人超。ニューノーマルのハワイとして観光を再開した状況で、経済を犠牲にしてでもロックダウンしたこの半年を思議すると憤りを感じる出足になっていることは否めません。

 ハワイにはハワイのルールがあります。この7カ月、苦しみ抜いて、今までWin-Winが是とされた事柄でも、今はお互いが痛み分けをしてアロハの精神で、ようやく今週でTier2という2.5~5%の陽性率まで到達したのです。ビジネス再開反対派からは観光客を締め出す動きも広がるなか、安直な二項対立にならぬよう分断ではなく、万全を期したシステム構築の安定が待たれます。

 そこで翻って渡航者システムに目を向けると、ハワイ州では自己隔離を追跡し監視するシステムがないため人海戦術で追跡していたのですが、8月にトゥルシ・ガバード下院議員が、飼い殺し状態の接触追跡者について激しい批判を繰り広げた結果、ブルース・アンダーソン保健局長の辞任が発表されたり、州の疫病対策トップであるサラ・パーカー博士は感染経路追跡チームのリーダーの地位を下ろされたりと混乱をきたしています。

 濃厚接触者追跡チームを監督する立場のエミリー・ロバーソン博士は7月16日の着任から2カ月弱で、保健局内の司令系統の責任の押し付けあい加減というか、縦割り体制による仕事の進まなさにブチ切れて無期限の休職中だったのですが、1週間で業務に戻り今回のプログラムに大きく功労したようです。性差別主義者的なことを言ってしまうと、やはり女子は責任感が強くキャパ越えで頑張ってしまうことが多いので、折れず倒れず、うまくしなって頑張って欲しいです。

ハワイ州のいま

 半年を振り返ってみるとこの未曾有のパンデミックのなか、ハワイに住む人たちは人種や老若男女、多様性の宝庫でありますが、矢面パーソンとしてのイゲ州知事視点を持ち、表裏の二面ではなく多角形として物事を転がして見つめ、他人への想像力を働かせ、アロハを胸に明るく前向きに頑張る人がとても多いと感じます。我がハワイ島でも「マサシのネイチャースクール 」というツアー会社がニューノーマルのツアー再開に向け、コロナ感染予防仕様にカスタマイズしたツアーバンをツアー会社として初めて制作したり、ハワイ島が誇る名物ガイド・ビッグジンのオンラインツアー(世界最大体積の山であるマウナケアの頂上4205メートルと世界遺産キラウエア火山を中継でつなぐ1時間のツアー)を開催し、収益はすべて現地の病院とハワイ大学ヒロ校に募金していたり、収入がゼロになっても一丸となってコロナと戦っています。

■ドライブスルー型のお化け屋敷が大盛況

 ハワイ州観光局はCOVID-19情報サイト(※2)を新設し、コロナに関する情報をすべて集約。困ったときの駆け込み寺としての機能を国内外で果たしています。ミツエ・ヴァーレイ日本支局長によるトークショー「ミツエの部屋」(徹子の部屋のオマージュ)が無料で豪華ゲストを集めて行われていたり(Peatixで参加申し込み受付中)、前編で触れた「Rigo SPANISH ITALIAN」がコロナ禍でも「Hale ‘Aina Award」BEST NEW RESTAURANT部門でGOLDを受賞したり、ソーシャル・ディスタンスをとったレストラン「パンケーキ&ワッフルズ」では人のパネルが飾られていたり……。ここでは写真を送るとパネルにして置いてくれるみたいなので、我こそはという方は全身写真を送ってみてください。アロハスタジアムでは、なんとドライブスルー型のお化け屋敷(Oahu Haunted House | Welcome to the Asylum)が誕生し、連日満員の大盛況です。

 ということでハワイの七転八倒を振り返ってきましたが、この未曾有のパンデミックに関しては、つくづく、真摯に誠実に取り組まなければいけない事柄だなと感じます。施政者はルールを作らねばならず、民は民で誰もがその人なりの言い分を持ち、科学的根拠があり、己の生活があります。それでも自分の、もしくは誰かの大事な人が、自分のせいで取り返しのつかない事態になってしまうリスクを最小限にするため、民たちはルールを守って粛々と生きる努力をするしかなく、災禍のニューノーマルとはいままでの自分のスタイルを、臨機応変に柔軟に変えていくことだと思います。

 このコロナ禍で炙り出された承服しかねる「他者」との共存には、自由に柔軟に対話することが必須であり、思い切ってその「他者」へ通常時であれば語らないことを言葉を尽くし乗り越えることこそが、そんなニューノーマルへの近道なのではないかな、と思いました。コロナ禍だからこそ、胸襟を開き、不安や未来を語らいましょう。とりあえず、一応私がブラは用意しておくんで!

(※1)「Mandatory State of Hawaii Travel and Health Form」
(※2)「COVID-19情報サイト」

▽鮓谷裕美子(すしたに・ゆみこ) ハワイ島在住の編集者・ライター。上智大学英文学科を卒業後、「NIKITA」(主婦と生活社)、「東京カレンダー」を渡り歩き、食べログマガジン編集長として立ち上げから関わる。守備範囲は西洋・東洋古典文学から食とエロスまで。

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