非接触でも売り上げ増!「オンライン販売サービス」活用法
「お客さまは神さまです」の精神で暖簾を守ってきた街のケーキ屋さん。ところが、新型コロナの影響により対面型サービスは厳しい局面を迎えている。ただ、ピンチをチャンスに変えようと、念願のオンライン販売に挑戦した店主もいる。
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旅行の自粛や飲食店舗への時短要請で、対面型で営業する店舗は風前のともしびだ。特に厳しいのが中小零細事業者で、そこで政府はオンライン販売などを促すため、補正予算から最高450万円の「IT導入補助金」を支給している(本年度はこれから)。
その補助金を使って静岡県藤枝市にある洋菓子店がオンライン受注システムを導入した。街でよく見かけるカフェ併設のケーキ屋さんだ。
オーナーは「新型コロナ対策としての非対面型サービスは今が導入のいい機会」とコメント。コロナで新設された特別枠(C類型)のIT導入補助金、約53万円を受け取っている。店のオンライン予約サイトをのぞくと、さまざまなタルトやミルフィーユ、HPには1979年の創業から変わらない味だという市松模様のスポンジケーキ「ダミエ」の写真もある。
この店の場合、たまたま「ITスキルのある従業員が在籍」していたこともあってIT化に踏み切れ、このまま順調にいけばオンライン販売(通販)まで広がる可能性がある。
経済産業省によると、個人消費者向けオンライン販売(EC=電子商取引)市場の売上高は2019年の時点で10兆円を突破。ただ、分野によってEC化率に大きな差があり、全体平均が6.76%のところ、「生活家電・AV機器、PC等」「書籍・映像・音楽ソフト」といった3割を超える分野がある一方、「食品・飲料・酒類」はわずか2.9%、「化粧品・医薬品」も6%しかEC化していない。
日本最古の雑誌「婦人画報」で知られるハースト婦人画報社がお取り寄せグルメ業に業態をシフトしたり、地方の名産品サイトが乱立しているイメージもあるが、食品のオンライン販売はまだまだライバルが少ない。プラスに捉えれば、市場開拓は早い者勝ちだ。
ITオンチなら外注してしまう
とはいえ、「ITがチンプンカンプン」「資金力がないし、売り上げ自体がもともと少ないから」と頭をかく店主も多いだろう。そんな人のため、Googleが中小企業のECサイト運営を支援する「はじめてのオンラインショップ支援プログラム」を始めている。
さらに、もっと手っ取り早く、オンライン販売をサポートする会社に“外注”してしまうという手もある。
リスティングプラス(新宿区)が運営する「御社のWebチーム」もそのひとつ。
どのようなシステムなのか? 同社の長橋真吾社長がこう説明する。
「1年ほど前からサービスを開始し、これまでに25社ほどサポートさせていただいております。問い合わせ自体は、前回の緊急事態宣言下で2.5倍ほどに増えました。対面型店舗の客が減り、オンライン販売を始めたくても小規模事業者はそのノウハウも少なく、IT人材を雇おうにもなかなか来てくれない。そこを補うため、当社がWebまわりを“丸ごと支援する”という格好です」
ITに詳しいのなら、自力でECサイトを立ち上げてしまうこともできるが、ただ作ればいいというものでもない。
NTTレゾナントの調査では、キーワード検索で欲しい商品が見つからなかった経験のある消費者は6割。3回やって見つからなければ購入を諦める人が7割もいた。
「オンライン販売するには、ただ販売ページを作るだけではなく、集客がうまくいくことが重要です。『御社のWebチーム』では、広告運用、マーケッター、コピーライター、動画ディレクター、Webデザイナーなど常時3~4人のメンバーがいて、サポート企業の会議にも出席したりします。事前に広告を打ったり、YouTubeなどを運用したり、メルマガ発行などを同時サポートしていきます。もちろん、カスタマーサポート代行なども行います」(長橋社長)
■料金は月額50万円から
餅は餅屋という言葉もあるように、専門家に任せてしまう方が話は簡単だ。ただ、気になるのは運用代行に対する料金体系。主に「サイトのアクセス数の歩合」「サイトの売り上げの歩合」「毎月の固定費」があり、サポート企業によって料金はまちまちだ。
「当社の場合、月額固定50万円~という料金体系を取っており、およそ半数の企業がその額で契約しております。50万円が高いか安いかは捉え方次第ですが、IT人材を新たに1人雇用するだけでもそのくらいの人件費はかかるはず。しかも今は、そのIT人材が極端に不足し、雇用すること自体が難しくなっています」(長橋社長)
自社ECサイトを持つ場合、少なくとも50万円プラスアルファ以上の売り上げがなければ赤字だが、オンラインモールの中にその他大勢で出品するのとは訳が違う。ちなみに、楽天市場の料金スタンダードプランは、出店料月額5万円のほか、システム利用料として月間売上高の2~4.5%が徴収されるシステムとなっている。
また、オンライン販売によって新たな顧客の掘り起こしもできそうだ。
「サポートしている企業のひとつにメークレッスンを展開しておられる企業があります。人と人が会って行う対面型サービスの代表的企業ですが、コロナの影響で会場の確保もままなりません。Webでは受講者の肌に触れて行うような細やかなアドバイスこそできませんが、これまで足を運んでもらえなかった遠隔地の顧客を呼び込めるプラスメリットがある。まだ始めたばかりですが、オンライン分野だけで月商100万円を達成しています」(長橋社長)
■政府、自治体の補助金をフル活用
宣伝をうまくやらないといけないが、勉強やレッスンなどの無形の「サービス」も販売できるわけだ。仮にコロナが収まっても、このようなオンラインで買い物をする流れは変わらないはず。
自治体によっては国とは別に補助金を出しているところもあり、変わり種としては東京都の「オンラインツアー造成支援補助金」(最高200万円、2月12日申し込み締め切り)といったものもある。サポート企業に代行を依頼するかは別にしても、街のパン屋のオーナーもここは思案のしどころかもしれない。