著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

歯科業界に横行するカネ儲け主義 高額医療への誘導を“撃退”するベストな方法を指南

公開日: 更新日:

「歯医者の断り方って本当に難しい」と戸惑いの表情を見せるのは最近、虫歯と歯周病の治療で歯科医院を訪れた50代の女性。

「そこは初めての歯科医院だったのですが、自由診療(保険外治療)を勧めてくるので、保険でお願いしたいと伝えると、先生の口調が急に不機嫌そうになった。そして『保険だと、歯を残せないよ』という。もうかかりたくないのですが、しっかり断ることができなくて困っています」

 歯科業界に横行するこうしたカネ儲け主義に憤るのは、セカンドオピニオンを求める患者を積極的に受け入れてきた斎藤正人歯科医師だ。

「自由診療のほうが適切な場合があるのは事実。しかし、自由診療なら歯が残せて、保険診療だとうまくいかないというケースはほとんどありません。明らかに、高額医療への誘導です」

 そんなことを平気で口にする歯科医師は許しがたいと話す斎藤氏だが、最近そうした傾向がより強くなっているという。

「東京オリンピックが終わる頃から歯科業界も上向いてくるというのが大方の見方だった。ところが、オミクロンの登場。患者さんは戻ってこず、低空飛行が続いている。広告費を年間6000万円も使っている有名歯科チェーンも売上げが大幅に減り、人員削減を余儀なくされていると聞いています。こうした大手に限らず、多くの歯科医院が患者さん一人当たりの治療費を上げようと必死になっているのです」

 どうすれば、高額医療への誘導を防げるのか。自由診療の場合、どれくらい費用がかかるのか、見積書を出すのが普通。それが適正かどうか見極めるには、相場を知っていなければならない。幸い、ネット上にはそうした情報がたくさんあるので、調べるのは簡単だ。それが相場の範囲内であれば、あとは予算との兼ね合いになってくる。生活を脅かすような額であれば、別の治療法や材料、保険での治療を求めていくことになる。

 斎藤氏は「患者さんは自分の考えをはっきり、歯科医師に伝えるべきです。遠慮する必要ありません」と話す。

別の歯科医院に変えることを考える

 だが、問題は前出のような場合である。患者からの申し出に不愉快そうな態度を見せたり、言葉巧みに治療法はこれしかないと誘導された時にどうすればいいのか。

「一度、不信感を覚えた歯科医師のもとで治療を続けるのは、苦痛以外の何物でもない。やはり、別の歯科医院に変えるほかはないような気がします」

 ただ、それを言い出すにはかなりの勇気がいる。「別の医院に行きます」と言える患者は現実には少ないだろう。毎回、診察が終わると、うながされるがままに次の予約を入れて、ずるずると通院を続けてしまうのだ。

■予約を無断でキャンセルするのはまずいが…

「もうこれ以上は無理だと感じた時、黙ったまま医院に行かなくなってしまう患者さんもいる。しかし、予約を入れてあるのに、断りの連絡もせずに行かないのはまずい。トラブルにもつながりかねません」

 歯科医師に意思をはっきり伝えられない患者にとって、通院を止める手立てはないのか。そこで斎藤氏が伝授するのは、予約の日時に行けなくなった旨を伝え、「また電話します」と言って、それきりにするやり方だ。

「こう言われたら、うちにはもう来ないかもしれないと相手も察します。私の場合もすべての患者さんとうまくいくわけではなく、相性が悪いケースもある。『また電話します』と言われたら、もうこの患者さんは7~8割がた来ないだろうなと判断します」

 決して誉められた方法ではないが、覚えておいて損はなさそうだ。不本意な通院を続け、精神的なダメージが大きくなりすぎては元も子もないのである。

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