老年の生態を描く人気エッセイストに聞いた「モテるシニア男性」ってどんなタイプ?

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定年ちいぱっぱ──二人はツライよ」「定年オヤジのしつけ方」「加齢なる日々/定年おじさんの放課後」など、老年の生態がテーマの人気エッセイストの小川有里さん。シニアの男女の機微を描いた超短編小説「死んでしまえば最愛の人」(草思社)も共感者が相次いでいる。

■タイトルを見ただけで本音が満載

 まずタイトルから老年の〈本音〉が満載だ。タイトルを見ただけで笑ってしまうシニアや、「一気に読みました」という70~80代が続出中。1話5~10ページほどで完結、個性あふれる39人の人間模様が描かれている。「モデルはいますね。ネタの提供のほとんどがエッセーの読者たちです」。老年夫婦のうつろいや三角関係になりそうな男女の機微、孫に振り回される老女など、まるで隣にいそうな人たち。

 例えば、小金持ちで手先が器用、車を運転できる82歳男性のモテ期を描いた〈狙われる男〉、可愛い孫に散々利用されてやっと気づいた老年の境地を描く〈使い捨てばあちゃん〉、生前は夫婦喧嘩が絶えなかった妻が夫が死んでしまうと百八十度変わって夫に感謝する表題作の〈死んでしまえば最愛の人〉。さらに、〈同窓会ほらー〉は60年ぶりに参加した中学の同級会が舞台。75歳の変わりすぎた同級生の姿は「顔当てクイズ」並み。おばあさんは隣に座った初恋相手のおじいさんに「あの頃、好きだったのよ」と告白。すると、相手もそうだったとのこと。ところが、その後に発覚した事実は、そのおじいさんは同姓の同級生で、本物の初恋の相手は亡くなっていた。シニア世代の“あるある”が垣間見られる。

 高知県出身の小川さんは、星新一ショートショート・コンテストに「美女マスク」(1980年)、「眼の記憶(あいのメモリー)」(82年)で入選。40年ほど前には介護雑誌のライターを担っていた。きっかけは会員制投稿誌「わいふ」(現Wife)に投稿していたこと。編集長だった故・田中喜美子氏(今年1月、本人の予言通り95歳で逝去)に才能を見いだされた小川さんは、日本でまだ“介護”という言葉が一般化していなかった時代に、家庭に焦点を当てた介護雑誌「やさしい手」(婦人生活社)の創刊号から廃刊までライターとして関わった。

 その際、「シルバーショート」という老人を主人公にしたショートショート1ページを連載していたことも今の活躍につながっている。

 その小川さんの名前が全国的に知れ渡ったのは50代半ば。通信社の依頼でエッセー「おばさん事典」(2003年5月~22年12月)を週1で連載。高知新聞などいくつかの地方新聞にも配信された。

「通信社の編集部から私に届いた読者はがきを一つ一つ丁寧に読み、お礼のはがきを出していました。その中で、ネタになりそうな内容を保管。エッセーや創作のための引き出しですね。時には連絡をとって詳しい内容を聞くようになりました」

 取材方法は電話。携帯のショートメッセージで電話のアポを取り、ネタ提供の女性と1時間ほどおしゃべりしながら聞き出す。女性たちは長電話することを夫に知られたくないため、「夫に聞かれたくないから2階に移動」や「夫が留守のときを見計らって」が多い。夫がいない隙に女性たちが小川さんにエッセーや小説のネタを提供してくれるのは、小川さんの高いコミュニケーション能力のたまものだろう。

■「ジジ活」で食事をおごってもらう

 それにしても小川さんが描くシニア女性たちはとてもたくましい。一方、男性といえば女性から承認されたいという欲求が見えてくる。

「女性がたくましいのは年金が少ないせいもあるでしょうね。『ごちそうしてくれる男性がいいわ』は“ジジ活”です。女性の方が、恋愛感情より損得勘定が勝っていることもありますから」

 恋愛感情より損得勘定。まさに言い得て妙だ。〈狙われる男〉もジジ活の変化球だ。

「一方、男性というのは『女性に好かれている』と勘違いをしやすいものです。まあ、勘違いしている方が幸せかもしれないですね」

 男性を勘違いさせて自分が得をするのも、女性の作戦のうち。小川さんはモテるシニア男性の特徴をずばり次のように指摘する。

「基本的に老年男性はモテないですね。でもあえてモテるタイプを挙げると、小金持ちでケチではない、そしてしつこくない男性。顔や清潔感(例えば少し尿モレしている)などはモテるモテないにあまり関係ないですね」

 尿モレおじいさんは、「死んでしまえば最愛の人」の続編「灰になったら夫婦円満」に出てくるエピソードだ。

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