(61)水際対策には多額の税金が…指定14カ国に定められたルールに「もう一つの利権」が見え隠れ
岸田政権が今年3月から新型コロナ水際対策を緩和し始めた背景に、産業界や学校業界の影響力があったのは間違いない。産業界は実習生ら低賃金の外国人労働者、日本語学校をはじめとする学校業界は留学生の早期受け入れ再開を望み、政府・与党への陳情を展開していた。
その一方で世論には対策緩和に対する不安が根強く残っており、緩和によってコロナ感染が再拡大すれば、7月に迫る参院選に悪影響が出てしまう。そこで岸田政権は、世論の動向を見極めつつ慎重に緩和を続けた。入国者は一気に増やさず、3月から4月にかけて上限を3500人、5000人、7000人、1万人と小刻みに引き上げた。一部の国からの入国者にはホテル待機も求め、「安心・安全」のアピールに躍起だった。
むろん慎重な姿勢自体は何ら責められるべきものではないが、検疫やホテル待機には多額の税金が投入された。その実効性はあったのか。
ベトナム人のグエンさん(29)は3月中旬、一時帰国していた母国から日本へ戻った。一緒に会社を経営するベトナム人の夫と1歳になる子どもを伴い、成田空港に到着した日のことをこう振り返る。