異様な兵庫県知事選の実態…斎藤元彦氏の疑惑「パワハラは捏造」の臆測が急拡散

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 17日に投開票日が迫る兵庫県知事選。当初は前尼崎市長の稲村和美氏が大きくリードと伝わっていたが、パワハラやおねだりなどさまざまな疑惑で逆風が吹いていた斎藤元彦前知事が激しく追い上げているという。どうやら「パワハラは捏造された」という陰謀論めいた主張が広がり、支持が盛り返しているようだ。先週の土曜日(9日)斎藤の選挙活動を丸一日追った本紙記者は、異様な光景を目撃した。

「今日は斎藤さんに謝りに来ました。聴衆のみんなも斎藤さんに『今まで誤解しててごめんね』って伝えていました」

 こう話すのは、斎藤の街頭演説に来ていた70代の女性だ。この日の朝、JR兵庫駅前(神戸市)で行われた街頭演説には、250人ほどの聴衆が集まった。斎藤が「初心に返りもう一度頑張っていきたい」と話すと、「斎藤さんは悪くない!」などと声援が相次ぎ、大盛り上がりだ。最前列で一言一句に「ウンウン」とうなずいていた冒頭の女性は、真っ赤な服も相まってひときわ目立っていた。女性はあるインフルエンサーのSNSの投稿から「真実にたどり着いた」と、熱っぽくこう話した。

「既得権益で甘い汁を吸っていた旧体制派の人たちが、改革を進める斎藤さんのことを疎ましく思い、県政の転覆を図って告発文書を世に出したのです。本当はパワハラの事実はなく、メディアや旧体制派が捏造したのです」

 とはいえ、県の調査では多くの職員が斎藤のパワハラを証言していた。この女性が話すような、臆測ベースの言説をSNSや街頭演説を通じて拡散しているのが、無所属で出馬したN国党党首の立花孝志氏だ。立候補していながら「自分には票を入れないで」と、斎藤を応援する旨の街頭演説をして回っている。

反対派に「殺すぞボケ!」

 この日は斎藤の演説が終わった後、同じ会場に立花が駆けつけ演説するという“作戦”を展開。ほとんどの聴衆は斎藤が去ってもその場に残り、立花が来ると「あ、立花さんだ!」と目の色を変え、食い入るように演説を聞いていた。

 斎藤もとい、立花の支持者はマスメディアへの不信感を隠さない。斎藤を支持するという50代女性はこう言う。

「斎藤さんがなかなか辞職せずおかしいなと思っていたところ、立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました。“斎藤さん潰し”に加担する既存メディアは本当におかしい。以前は産経新聞を購読していたのですが、今では新聞はもちろん、テレビも一切見ない。その代わりユーチューブとXで偏りなく情報を集め、考えが凝り固まらないようにしています」

 夕方、斎藤は尼崎市の尼崎中央商店街を練り歩いた。ここもまた異様な熱気で、100人から200人くらいが斎藤を取り囲み、大名行列の様相。小学校低学年くらいの女の子が「さいとうさんがんばれー!」と叫べば、「ガンバレ! サイトウ!」とコールが突発的に起こり、大きな声が商店街に響き渡る。一般客は「一体何事か」と、ポカンと口を開けていた。

 人ごみの中には斎藤に異を唱えようと「パワハラ知事」などと書かれたプラカードを掲げる者もいた。それを見た斎藤支持者が激高し「殺すぞボケ!」と詰め寄るなど、騒然とする場面もあった。

 斎藤の集会は確かに盛り上がっているが、真偽の判断が難しい情報が飛び交う状況に後押しされているのも事実だ。稲村氏を支持する地元首長はこう吐露する。

「こんなにも臆測が拡散されている選挙は、本当にいかがなものかと思います。告発とは本来関係ない県民局長のプライベートのことまでいろいろと噂され、もうメチャクチャです。それに、パワハラ疑惑については斎藤さんの人望がないのも事実。県立大学無償化など大がかりなことを言い出す割に、自分は根回しなどをしない。結果、現場は混乱し、職員に負担を押し付けるから、県庁にあれだけ味方がいないのです」

 県政の混乱がまだまだ続くことを予感させる一日だった。

  ◇  ◇  ◇

【動画】斎藤元彦前知事が尼崎商店街を練り歩き 聴衆が殺到

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