三宮「森井本店」の神戸牛のスジを使ったどて焼きはまるで霜降り牛の煮込み

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「一番うまい部位の切り落とし」といってもいい

 さて、待望の神戸牛のどて焼きである。小鉢に脂が浮いた汁の中に箸でつつけば、崩れんばかりに煮込まれた牛スジがぎっしり。熱々を一口放り込む。う、うまい! そこに生ビール。サイコ~過ぎる。続けてもう一口、噛みしめるとジワリとにじみ出る脂が口中を占拠する。甘みがあり、しかし決してしつこくない。さすが神戸牛。この肉は牛スジではないね。もはや一番うまい部位の切り落としといってもいいだろう。アタシが知ってるおでんネタの牛スジとは別物。少しスジっぽいところのある霜降り牛の煮込みともいうべき逸品だ。

 メニューには白ご飯もある。どて焼き丼の衝動を抑えるのに必死のアタシ。ご飯に合うなら酒に合わぬわけはない。ならば看板の金盃樽酒(600円)だ。升になみなみ注がれた金盃を角からグビリ。甘口の金盃と神戸牛の甘みが程よくマッチする。こりゃヤバイですよ。「お口に合いますか?」と、4代目が声を掛けてくれる。ホッと和む瞬間だ。

 樽酒をすすりながら「歴史の割にお店はきれいですね」。「空襲と震災で2度も全壊してますからね。残っているのは金盃の看板だけです」。うかつだった。あの震災からまだ30年しかたっていないのに、アタシの中では風化しつつあったのだ。しばし金盃が苦く感じた還暦男であった。 (藤井優)

○森井本店 神戸市中央区北長狭通2-31-42

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