投資の世界のヒエラルキー「触らぬマドンナに祟りなし」
「前から3両目の2番目の右側のドア」
そう心で唱えながら、駅までの坂道を駆け上がる。絶対に遅れるわけにはいかない。出会えればラッキー。今日一日の運命が懸かっている。
高校2年生の風薫る季節、隣の学校の“マドンナ”が、いつもその位置で本を読んでいる。
「今日も出会えた」という達成感とともに、青春の一ページが刻まれていく……。
そんな若かりし頃の淡い思い出。シニアの皆さんも、当然、経験したことがあるだろう。
だが、時として裏切られることがある。彼女が乗っていなかったからだ。あの爽やかな笑顔は、どこへ行ってしまったのだろうか。
これと同じようなことが、株式市場でも起こった。連戦連勝の有名投資家Zが、Mという銘柄を買ったというのだ。ネット上では大さわぎ。投資家は「われ先に」とばかりに、その銘柄に飛び乗った。「おこぼれにあずかろう」というのだ。
しかし、急騰の熱が冷めやらぬその日の夜、突如、有名投資家Zが「全株式を売却した」と発表した。利益は1億円! ほんの1週間にしては、かなりの上出来である。