みそや日本酒も原料不足で加工用にも備蓄米放出…4~5年前のコメにニーズはあるのか
業界の反応は対照的
全国の酒造組合で組織される日本酒造組合中央会の担当者は、やはり品質への懸念を口にする。
「日本酒は、酒造りに適した『酒造好適米』だけでなく、一般的なお米も材料に用いられます。備蓄米には一定のニーズはありそうです。ただ、記録的な冷夏でコメが不足した『平成の米騒動』(1993年)の時に、いくつかの酒蔵が古いコメで酒を造ったところ、古米の臭いがしてあまり出来が良くなかったそうです。日本酒は何より香りが大切。現在はコメの保存技術も進化しているようなので使ってみなければわかりませんが、4~5年前のコメでは少々不安は残ります」
ちなみに、米焼酎は原料が古くても日本酒ほど影響を受けないようで、昨年放出した備蓄米で製造された焼酎が、すでに販売されているという。
一方、みそメーカーで組織される全国味噌工業協同組合連合会の担当者からは、歓迎の声が聞かれた。
「みそにはさまざまな種類がありますが、全体の9割がコメを材料に用いるため、コメ不足は大きな問題です。国産の加工用米が高騰する中、備蓄米放出は本当にありがたい。みそはコメを蒸してから煮るなどの製造工程があるため、古いコメでも用いることができます。昨年の1万トン程度の放出では原料不足がそこまで改善されなかったので、政府にはぜひ十分な量を放出してもらいたいです」
とはいえ、備蓄米の量は限られる。進次郎は今後、ミニマムアクセス(最低輸入量)米の活用も示唆したが、みそも日本酒も、国産米にこだわる業界の声は根強い。
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地方に備蓄米が十分に行き渡らい可能性も……。●関連記事【もっと読む】『「備蓄米販売」では購入格差は埋まらない…手に入るのは都市部ばかり、地方は置き去り』で詳報している。