(2)小倉の角打ちで飲む
10月の好天の土曜日の昼下がり。少し歩いた後だったから喉が渇いていた。以前の店と同じような造りの店内でビールをもらう。懐かしい女将さんの顔も見える。まるでお変わりないことが嬉しい。カウンターには常連と思われる老人がひとり、端っこには女性のひとり客も見える。カウンターのケースの中には、サバのぬか炊きや玉子焼きなどのつまみも見える。酒は、たとえば新潟の吉乃川が一合530円、半合270円。他の酒も一合と半合の値段が書いてある。安い。そして、ひとり30分以内で飲むようにという注意書きも昔のままだ。
店の人に、久しぶりに来たと挨拶をすると、この仮設店舗も来年の早いうちには閉じ、新たな商業ビルには入らないと言われた。つまり、赤壁酒店の歴史はもうすぐ終わるのだ。
「店を開いたのがいつなのか、正確にはわからないんですよ。でも、この市場ができる前からやっていたらしいですね」
四代目にあたる女将さんは、静かにそう語った。
もともとの赤壁酒店の向かい側の店舗群は、神嶽川にせり出して建っている。この川にはかつて荷を運ぶ船が行き来をし、現在の旦過市場のあたりに荷を下ろしたことから市場が形成された。それが大正時代とされる。今年は昭和100年。つまり、旦過市場にも赤壁酒店にも、ざっと数えても110年前後の歴史があるのだ。

















