著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

御三家「武蔵高校」復活の兆し(前編) 東大、京大、一橋、東科大に65人、その「秘密」を杉山剛士校長に直撃!

公開日: 更新日:

東大推薦枠に入った生徒の特長と武蔵の強み「わくわくわい」の成果

「武蔵には昔から受験のために詰め込むような教育を良しとしない考えがあるんです」

 4年前、武蔵は創立100周年を迎えた。杉山校長は「新生武蔵」を掲げながらも、「100年続いた強みを消す必要はない」と考えた。その強みとは「建学の三理想」と呼ばれるものだ。「東西文化融合を遂行」、「世界に雄飛」、そして「自調自考」である。杉山校長はこれに「知好楽」を付け加える。知りたいこと、好きなこと、楽しいことを追求する姿勢である。

「武蔵の強みは、自ら調べ自ら考える人間を育てることです。そして、知好楽。生徒一人ひとりの"わくわく""わいわい"を大切にしながら、6年間かけて自調自考の精神を身につけてもらう。時代は常に変化しています。武蔵の強みを生かしつつ、さらに進化することを目指しました」
 こういう杉山校長は、生徒たちが自分の興味を深く掘り下げ、探求する学風が「近年の大学入試、特に推薦入試で求められる人物像と合致してきたと感じる」とも言った。

 今年は東大の推薦枠に3人が入った。一人は惑星の研究、もう一人は中世城郭の研究、3人目は世界80カ国の高校生以下が参加し、プログラミングを競う国際情報オリンピックに出場、銀メダルを獲得した生徒だ。他にも昨年はクイズ研究会の高3の3人が日本テレビの全国高校生クイズ選手権に出場、東京都代表になり、決勝戦に進出。あと1問で優勝というところまで行った。

 インターハイの相撲個人戦100㌔未満級に出場した高3の生徒がベスト16に入る快挙もあった。日頃の「わくわくわいわい」の成果といえそうだ。こうしたトピックを挙げていくと、大学受験にそれほど、熱心ではないように映るかもしれないが、ちょっと違う。杉山校長は確かに「進学実績の向上という言葉は一回も使ったことはない」と言うが、別の言葉を使っている。

「各生徒の進路希望の実現です。自分は一生をかけて何をするんだ、ということを考えさせる。そのために受験との格闘が必要になってくるのであれば、サポートする。結果として、それが進学実績の向上につながるかもしれませんが、生徒の将来のためになっているかどうかが大事なんです」

 職員全員で徹底的に議論を重ね、「新生武蔵の進路指導」の形をつくり上げていったという。そのひとつが校長による生徒面談だ。昼休みに生徒数人ずつ校長室に呼んで、ざっくばらんな話をする。高3から中1まで全生徒と会うので当然、年をまたぐことになる。さらに組織的な補習、模擬試験の分析など、きめ細やかな対応も行っている。こうした積み重ねが武蔵の躍進に結びついてきたのだろう。

  ◇  ◇  ◇

 4月12日配信予定の「後編」では進路指導の具体的な取り組みをさらに深堀りしてレポートする。【関連記事】もあわせて読みたい。

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