「この価格で大丈夫?」と客も心配に…応援しよう激安食堂3店(関西)

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 デフレ下の平成はワンコイン定食や弁当が珍しくなかったが、物価高の今も激安を守る食堂がある。もちろん、味は文句ナシにうまい。常連客が心配するほどの良心的な店は、精いっぱい応援しよう。関西編は大阪と神戸の実力3店だ。

■グリルSano惣(大阪・天神橋)食肉卸の意地

 老舗の食肉卸「佐野惣」が手がける「グリルSano惣」は、道を挟んだ向かいにある。直営店だけに肉は上質で新鮮、しかも安い。だが、このご時世、安いにもほどがあるのではないか。

 ハンバーグライス700円、豚カツライスに鶏から揚げライス、ミンチカツライスも700円。常連客はこれに18種類もあるトッピングをのせて楽しむのだが、それでも1000円でお釣りがくるからうれしい。

「物価高で原材料費なども上がってるし、本当は改定したいところ。お客さんの中には『もっと上げたらいいのに』と言ってくれる人もいます。でも、安くておいしいものを食べに来てくれる今のお客さんを大切にしたい。だから値上げはしません」

 母の佐野光世さんとほぼ2人で店を切り盛りする英里奈さんは、そう言ってほほ笑んだ。

 大人気メニューのハンバーグライスにコロッケ(100円)と目玉焼き(130円)をトッピング。コロッケは「どこのものより、この店のが一番うまい。衣はテイクアウトで冷めてもパリパリや」と常連客。さすが肉屋のコロッケだ。

 そしてメインのハンバーグ。合いびきミンチとタマネギを混ぜ、丸めてポンポンと両手でしっかり空気抜き。鉄板、レンジで2度焼きし、数十年前から継ぎ足す秘伝のデミグラスソースでじっくりと煮込む。だから口に入れた瞬間に溶けてしまいそうなほど軟らかい。

「出産を機に中学校の体育教師を辞めてね。小さい頃からこの店を見てきたので、いずれ継ぐものだと抵抗感は全くありませんでした」(英里奈さん)

 創業は昭和39年。U字カウンターのみ18席、食器は銀皿。昔ながらの定食屋の雰囲気を漂わせる店内で、母娘は今日も笑顔満開でフル回転する。

(住)大阪府大阪市北区長柄西2-4-14
(営)午前11時~午後3時 
 定休日=日祝日
(℡)06-6354-8110

キッチンもとや(大阪・上六)日替わり600円

 店主の野崎俊男さん(56)と同級生で友人の岡田美佐子さんに、ある1週間の日替わりランチの献立を教えてもらった。

 ①チキンオムカレー②チキンカツ&レンコン肉詰めフライ③カツ玉&ササミしそフライ④トンカツ⑤チキン南蛮&コロッケ⑥豚の焼き肉。飽きないようにほかにもいろいろな献立がある。こうしたメインに、かけそばかうどん、ラーメン、豚汁を選べる。値段は超破格の600円ポッキリ。大阪ゲンダイが拠点を構えるビルの社員食堂の定食よりはるかに安い。

「ボクの両親が28年前にオープンした時の日替わりは400円。理由? のれん分けしてくれた父親の友人の店が『うまいもんを安く』を掲げていたので、ウチが安くしないわけにはいかない。でも15年ほど前から50円ずつ上げざるを得なくなりましてね」(野崎さん)

 600円になったのは今年の2月。それまでは同じボリュームと同じ味で550円だったわけだ。一体どんなやりくりをしているのか。秘訣はどこにあるのか。

 まずは閉店後のスーパー回り。車で30分の帰宅途中に片っ端からスーパーをのぞき、値段を比較し安い食材を仕入れる。「5円でも安い店を探してね」。さらに12席の回転率。「注文の8割が日替わりなので、あらかじめ準備しておき、座ったらすぐに出せる態勢を整えてます。お客さんの回転が早くなって売り上げ増にもつながる」。そして味。

「出汁はカツオをたっぷりと使い、さらしでこす。化学調味料を使う店も多いと聞くけど、一切使ってません」

 取材日の献立は⑤、人気の高い豚汁を選んだ。チキンはとても軟らかく、タルタルは酸味が絶妙。豚汁は豚、豆腐、大根など7種類もの具だくさん。胃袋も気分も大満足の600円だった。

(住)大阪府大阪市天王寺区上汐3-7-15
(営)午前11時~午後3時、午後5~9時(金曜は午後8時まで。土曜は昼のみ)
 定休日=日祝日
(℡)06-6771-1520

めいりん(神戸・長田)毎日200個超完売

 自分の名前を中国語の発音で店名にした店主の井上美麗さん(61)は、右手親指の付け根に勲章を持つ。直径1センチ大の硬いタコだ。2009年のオープン以来、17年間ほぼ毎日、グイッグイッと麺棒を押して名物の水餃子の皮をのばしてきたからできた。

「毎日200個よ。定休日に作り置きするけど、それでも遅い時間には売り切れるわ。水で練った小麦粉を30分間寝かせて皮を作り、餡から包みまで全部で4時間。買い物やほかの仕込み、掃除もあるから睡眠時間は5時間しかないの」

 丹精込めて作った皮はもちもちプリプリ。餡は豚肉、野菜、エビを使った三鮮餃子で、ショウガなどの薬味を利かせる。沸騰した湯から茹でること7分。1人前500円で7個もあり、タレなしで食べると、それぞれの食材のうまみが口いっぱいに広がり、おいしさの秘密がよく分かる。

 中国・山東省煙台市出身で来日は24年前、38歳の時だった。

子どもの時からお母さんの作る料理を手伝い、教えてもらったりしていた。この店で作るのもすべてそれ。私には高級料理は作れない。中国の家庭料理、お母さんの味なんですよ」

 安くてうまくてボリュームたっぷり。青椒肉絲(650円)、麻婆豆腐(600円)も人気だ。 そして、ほとんどの客が水餃子とセットで注文するのが老麺(あんかけラーメン=800円)。具材に豚肉、エビ、ニラ、白菜を使い、中華スープをベースに片栗粉と卵でとじる。麺がそうめんのように細いからスープがよくからみ、高級店とは違う、家庭の味にホッとする。

「今は1人だけど、お客さんはみんな優しいし、毎日が楽しくて全然寂しくない。東京には長男と孫もおるから、まだまだ頑張るよ」

 美麗さんの親指の勲章は、しばらく消えそうにない。

(住)兵庫県神戸市長田区二葉町3-10-12 丸五市場内
(営)午後2~10時 
 定休日=火曜
(℡)080-6168-2578

※価格やメニューなどは取材時のもので、変わる可能性もあります。訪問される際はご注意ください。

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