著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(41)山梨の美酒を訪ねて

公開日: 更新日:

 蔵を後にした私は甲府へ向かい、「青煌」を置いている店を訪ねた。「十四番目の月」という洒落た店で、甲州信玄豚のパンチェッタと桃のピクルスをつまみに、ワイングラスに注がれた「青煌」を飲んだ。うまみの深い日本酒の原料として定評のある雄町に、酵母はツルバラ。吟醸造りで丁寧に仕上げた純米吟醸酒。これが、豚バラ肉の塩漬けに合うのかい? 1升瓶から湯呑茶碗に受けて飲むのが似合う「ミスター茶碗酒」と呼ばれていた私は、戸惑いを隠せなかった。

 が、飲んでみて驚いた。うまいのだ。これほど穏やかな酒が豚肉に負けていない。でも、考えてみれば、このブランドの予習をしたときも、マダコのうまみをしっかり受け止めていたのだ。しかし、それにしても、パンチェッタと上品な純米吟醸のどこが互いに引き合うのか。わからない……。

 私は続いて「青煌」の「on the Rock&Cool!!」という度数18度の辛口純米吟醸原酒をもらい、それには馬肉の赤身のゴマ塩だれをかけて食べた。またしても吟醸酒に肉である。うまいのだ。私にはまだ、日本酒には肉より魚や野菜、豆などが合うと信じているところがあった。だが、肉と酒はよく合うではないか。オレは今まで何を食ったり飲んだりしてきたのか。そんな物思いに沈みそうになったが、そのとき、アッと気づいた。豚しゃぶ、鳥すき、熊鍋……。私の好物にはすべて日本酒が合うではないか。そうだった、そうだった。

 かくなる上は、予習用に買った「青煌」をよく冷やし、ベーコンに合わせてみるか……。帰りの中央線の車中で、そんなことを考えていた。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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