SNSフォロワー430万人超! YouTuber「けんた食堂」さんに聞く家庭料理の奥深さ
2~3の食材でも豊かな味が生まれる
──その方が、家庭料理らしいホッとする味になりますね。
そもそも、家庭料理と外食って、味付けの主軸がまったく違う。同列に考えてしまうとダメなんですよ。外食の味を家庭で再現しようと思うと、「もうしんどい」ってなっちゃうんですよね。
──実際、けんたさんのレシピ本では、パスタが必要最小限の食材で構成されています。
たった2~3の材料だけでも組み合わせれば、実はとても豊かな味が生まれるものです。例えばカルボナーラは誰もが知るパスタですが、もともとはイタリアの港町とかで、労働者の方々が手っ取り早く作って食べていたもの。要は、中華でいうラーメンみたいな存在だったはずです。そう考えると、生クリームなんて入れなくてもいいし、卵、ベーコン、塩、コショウ、チーズだけで構わない。いろんな食材があり目移りしてしまうかもしれませんが、シンプルな組み立てでも、意外と簡単においしいものが食べられるよっていうのが、私の主張です。
──個性の強い味と言えば、「うま味調味料」などは使いますか?
最近の料理でも使いましたよ。あれでしか出せない味は、確実にあります。ただ、注意しなければならないのは、頼りすぎてしまうと、全て同じ味になってしまうことです。少量でも劇的に効きますし、入ってるか入ってないかわからないくらいの量でうまく使いこなせれば、料理のクオリティーは上がると思います。
──シンプルな料理の動画もバズっているのが凄いですね。
基本的にバズらせようとは考えておらず、ただ、自分自身が良いなと思ったものを上げています。華やかな食材とか、チーズみたいに強い食材ばかり使うことはせず、むしろ地味な食材もバンバン使います。そういえば、ある動画に「切り干し大根の動画でこんなに再生回数が回るのってけんたさんくらいですよね」というコメントがありました。そんなふうに言っていただけるのはうれしいです。
──現在、ユーチューブのチャンネル登録者数は214万人。人気コンテンツだからこその悩みは?
一番は、いろいろとやりたいけど時間がないということですね。逆に言うとアイデアは常に湧いてきて、ネタ切れはありません。
──「~したらステキだ」「~したっていい」といった、独特な言い回しの「けんた構文」が、若者などの間ではやっています。
みなさんが「けんた構文」を駆使しているのを、大変面白いなと思って私も見ています(笑)。でも、あれって私の普段の言葉遣いなんですよ。家内と話すとき、「ザク切りがいい」とかつぶやいてます。何か自分でキャッチフレーズを考えたわけでもなく、私が料理をするときの言葉をそのまましゃべっています。
──「~したってかまわない」という言い回しもありますね。
料理をするにあたって、「こうでなければならない」っていうのはあまり言いたくないんですよね。だからこそ、自然と出てくる言葉なのだと思います。「ズッキーニがなければキュウリだっていいじゃないか」とかね。
──お決まりのあのポーズ(写真)は、どうやって生まれた?
私はあくまで裏方で、料理こそが主役だと思っています。で、このポーズというわけです。
──けんたさんが家庭料理の魅力を伝えている一方、慌ただしい現代社会では、料理を敬遠してしまう人も少なくありません。
とはいえ、人間どんなに忙しかろうと、食べなきゃ生きていけない。どうせ食べるなら、おいしい方がいいわけじゃないですか。その点、料理というのは作っていて楽しい。出来上がっていく過程を考えるのも、実際に見るのも面白いし、何かの癒やしになってくれます。しかも、おいしいものができたときの感動は他では得られません。それでいて、これまでお話ししているように、少ない食材でも案外簡単に、おいしいものを作れるんです。
──まさに誰でも大いに楽しめる娯楽であると。
そうですね。それに、「人を思う」という側面もあります。おいしいレパートリーが1つでも増えると、必ず自分が食べているだけでなく、誰かに食べてもらいたいという気持ちが生じる。ある意味、社会的な営みだし、おいしいものを分かち合いたいというのは、人間の本能ではないかと思います。
──けんた食堂の原点は、子供を思う気持ちからだそうですね。
本気で料理をしようと思ったきっかけは、娘が生まれたことです。この子を絶対立派に育ててやろう、できる限りおいしいものを食べてもらおうと思い、自分の料理を記録するためにウェブサイトを作ったのがそもそもの始まりです。だから、うちの娘とウェブサイトは、同い年の21歳。おかげさまで、娘は立派に育ってくれました。
(聞き手=橋本悠太/日刊ゲンダイ)
▽けんた食堂(けんたしょくどう) 1976年、長崎県生まれ。2005年、自身のレシピサイト「ぷちぐる」を開設。18年からSNSでの発信を本格化する。24年にレシピ本「うちめし道」(扶桑社)を出版。
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