『VIVANT』監督もパワハラ認定…「責任感の強い上司」ほど暴走する“意外な理由”
「普通は」「常識だろう」が口癖になっていないか?
怒りに任せて言葉をぶつけないため、アンガーマネジメントでは、まず数秒間その場をやり過ごす「6秒ルール」がよく知られています。衝動的な発言を防ぐうえでは、一定の効果が期待できるでしょう。
ただ、感情が頂点に達してから6秒耐えるだけでは、根本的な対策にはなりません。強いストレスを受けると、計画や感情の制御、柔軟な判断に関わる前頭前野の働きが、一時的に低下しやすいと神経科学の研究でも指摘されています(※4)。
緊張が続いて交感神経が優位になると、相手の説明を最後まで聞く余裕も失われます。私が危険信号として見ているのは、呼吸が浅くなる、肩や顎に力が入る、相手の話を遮る、「普通は」「常識だろう」といった言葉が増えるなどの変化です。
こうした兆候に気づいたら、その場で重要な結論を出さず、いったん席を外す。息をゆっくり吐き、判断を翌日に持ち越す。怒りを精神力で抑え込むより、まず体の緊張を下げるほうが現実的です。
■“いつもと違う行動”が上司を救う
もう一つ、私が勧めているのが、日常の小さな工夫や発想を意味する「リトルC」です。
創造性と聞くと、特別な才能が必要だと思うかもしれません。ですが、料理の手順を変える、写真を撮る、普段とは違う道を歩くといった身近な行動も、リトルCに含まれます。
いつものやり方から少し離れることで、凝り固まった思考をほぐし、別の見方を取り戻しやすくなるのです。
職場であれば、上司が最初から答えを出さず、まず部下に意見を出してもらう。失敗しても大きな問題にならない範囲で、新しい方法を試す。会議では、あえて反対意見を求める。
こうした小さな工夫が、「自分の考えだけが正しい」という思い込みを緩めてくれます。結果を出してきた人に必要なのは、怒りを我慢する根性ではありません。異論がきちんと届く環境と、脳を戦闘モードから戻す習慣なのです。
(構成=西脇章太/にげば企画)
【参考文献】
※1「Power and Perspectives Not Taken」Psychological Science(2006年)
※2「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」Administrative Science Quarterly(1999年)
※3「Stress Signalling Pathways That Impair Prefrontal Cortex Structure and Function」Nature Reviews Neuroscience(2009年)
▽板生研一(いたお・けんいち) MBA/医学博士。WINフロンティア株式会社創業者・CEOを14年務める。ソニー株式会社(現ソニーグループ)出身。東京成徳大学経営学部特任教授。行動神経科学をベースに、ビジネスパーソンや経営者の「戦略的クリエイティブ・メンタルマネジメント」を研究・実践。監修に『超疲労回復』、著書に『なぜ、クリエイティブな人はメンタルが強いのか?』(ともにクロスメディア・パブリッシング)
◇ ◇ ◇
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