初仕事は中国人同士の殺人事件の現場 密入国者に殺されたギャングとその愛人
アジア人犯罪が急激に増えた1990年代から2000年代。外国人犯罪者の司法通訳として奮闘し続けた。
初仕事は川崎市・小川町で発生した中国人同士の殺人事件。中国のギャング・蛇頭が自分たちの手引きで密入国した男たちに殺されたのだ。
蛇頭とは本来、中国本土から国境線にある川を泳いで香港に逃げる難民のことを指す。岸辺から見ると、頭を上げて川を泳ぐ姿が蛇のようだからで、1950年代から60年代、密入国の手配をする人間や集団のことを示すようになり、儲かるビジネスとして中国の沿海地域ではやったのだ。
90年代の半ば、中国人の庶民にとって国内で頑張るよりも海外に脱出して働くのが豊かになる早道。親戚一族や村人全員にお金を借り集め、蛇頭に頼んで貨物船の底に身を隠し、日本やアメリカ、そしてヨーロッパに渡る。
相場は国や地域、働き先の有無によっても違うが、日本の場合、入国するだけなら150万円、仕事の斡旋も含むと300万円。これは当時、役人の10年分の給料にあたる。