著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

ENEOS HD(下)高値で買収した再エネ会社が長崎県沖の決戦で敗北

公開日: 更新日:

全国至る所でメガソーラーの反対運動

「脱炭素化の流れに乗り遅れるな」。ドンとして君臨してきた杉森務会長(当時)の鶴の一声で買収が決まった、と噂された。

 JREと三井住友ファイナンシャル&リースの子会社、SMFLみらいパートナーズ(東京都千代田区)は、熊本県高森町にメガソーラー(大規模太陽光発電所)「JRE阿蘇高森太陽光発電所」を建設し、22年5月から商業運転を開始した。メガソーラーは再エネの切り札とみなされてきたが、時代は変わった。光の反射や過度の熱が発生し、その上、景観が損なわれることから、「今やメガソーラーは環境破壊の元凶とやり玉に挙がるようになった。世界最大級のカルデラ(火山噴火でできた巨大なくぼ地)の熊本県阿蘇山周辺の景観が、大地を覆う無数の太陽光パネルで激変した。阿蘇の世界文化遺産への登録を目指していることから、熊本県知事が危惧を表明したほどだ」(全国紙の地元記者)。

 全国至る所でメガソーラーの反対運動が起こり、JREが宮城県丸森町で計画していた風力発電所の建設は中止に追い込まれた。

 陸上が難しいから海上だ、ということになったのかもしれない。JREは洋上風力発電で再エネ海域利用法に基づく海域で3つの事業を進めてきた。最も力を入れたのが長崎県西海市江島沖の海域。洋上風力発電合同会社には、ENEOS、戸田建設、大阪ガス、関西電力、INPEX(旧・国際石油開発帝石)、中部電力が参画した。

 経済産業省は23年12月、国が指定した秋田・新潟・長崎の3海域での洋上風力発電事業の公募結果を発表した。

 秋田県は東京電力と中部電力の共同出資会社、JERAなどの企業連合。新潟県は三井物産などのグループ。ENEOSが期待した長崎県は住友商事などが選ばれた。

 長崎県沖はJRE=ENEOS陣営が先行しているとみられていたが、後発組の住友商事陣営に逆転を許し、敗北した。

 落札できなかったことにより、ENEOS HDは「巨額ののれん代の減損が必至となった」(前出のエネルギー担当のアナリスト)といわれている。

 セクハラの2トップが残した再エネ会社JREは、巨大な負の遺産となり、24年春には決まるといわれている次期社長を苦しめることになる。

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