生成AIの未来予想図 株価4万円へと牽引した半導体相場の起爆剤は今後どうなる?

公開日: 更新日:

 日米の株式市場は、半導体銘柄が引っ張っている。この勢いはいつまで続くのか。株価4万円に向かう起爆剤となった生成AI(人工知能)とともに、今後の方向性を占おう。

 ◇  ◇  ◇

 時価総額2兆ドル(約300兆円)を超えて世界3位となった米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)。同社の半導体チップであるAI用GPU(画像処理演算プロセッサー)は世界シェア9割超と、事実上、独占的な存在だ。

 エヌビディアのGPUは、半導体受託製造ビジネスで世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)で製造されている。そのエヌビディアやTSMCに半導体検査装置を提供しているとされるのが、東京エレクトロンやアドバンテスト、レーザーテック、東京精密などの日本企業。急成長するエヌビディアに連れて、これら半導体銘柄が日本の株式相場を押し上げているのだ。

 そもそも画像処理用半導体であるGPUは、主にゲームや、AIの画像の読み込みやディープラーニング(機械学習)で使われていた。パソコン全体を制御するCPUとは異なり、これまではニッチな存在だった。

 しかし、2022年11月公開のChatGPT(チャットGPT)をはじめ相次ぐ生成AIの登場で生成AIブームが急拡大。GPU需要もグンと盛り上がった。

 ユーザーは生成AIを利用する際、大規模データセンターにあるAIサーバーにアクセス。そこにAI用GPUが使われている。ユーザーが増えるほど、より高性能なGPUが必要で、エヌビディアへの需要が一気に高まったのだ。

■エヌビディアのGPUは1年待ち

 いまではエヌビディア製チップの供給が逼迫。同社の売り上げも急増し、株価も高騰。米国S&P500種株価指数の最高値更新にも貢献した。

 では、これから生成AIはどうなるのか。日本企業との関係は? 生成AIに詳しい茶圓将裕・デジライズ代表に詳しく聞いた。

「現在、エヌビディアにGPUを発注しても1年待ちといわれます。しかし、同社製品を使って本格的なAIサービスを行っているのは基本的にはGAFAMなどのビッグテックですから、日本企業の大半に大きな影響はないでしょう。日本の場合、GPUを使わないAIのアプリケーションレイヤーのサービス企業が多く見られます」

 生成AIの産業分野は①ハード(GPU)②モデル(GPT-4、Gemini1.0などの大規模言語モデル)③アプリ(生成AIの利用)、の3つに分類。日本では、①に携わる検査装置企業などもあるが、③に属する企業が中心だ。

 生成AIで日本企業はいまのところ傍流でも、中心に食い込む余地はあるという。

「今後は、GPUを大量に組み込まなくても精度が高いAIモデルが開発されるはずです。そうすると、日本企業を巡る環境は劇的に良くなる可能性があります」

 米国ではCPUでシノギを削るAMDとインテルだけでなく、エヌビディアユーザーであるアマゾンやグーグルも独自のAI用GPUの開発を急ピッチで進めている。エヌビディアの独り勝ち状態は、長くは続かないかもしれない。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    進次郎農相の「500%」発言で抗議殺到、ついに声明文…“元凶”にされたコメ卸「木徳神糧」の困惑

  2. 2

    進次郎大臣は連日の視察とTV出演で大ハシャギ…ムチャぶりされる農水省は“ブラック企業化”のお気の毒

  3. 3

    ドン・キホーテが進次郎農相に異例の「直訴」…コメ流通は消費者ファーストではないのか? 識者が解説

  4. 4

    三井化学が石油化学事業を分社化…その先で描くのは過剰な同業他社との再編だ

  5. 5

    大阪万博は値下げ連発で赤字まっしぐら…今度は「駐車場料金」を割引、“後手後手対応”の根本原因とは

  1. 6

    自公政権の無策で失われていく庶民の味…「カレー」「ラーメン」「焼き肉」「洋菓子」「ステーキ」すべて倒産件数最多

  2. 7

    進次郎農相「コメ卸業者が営業利益500%増」発言で飛び交う「価格カルテル」疑惑と「コメの先物取引」で懸念されていたこと

  3. 8

    6月15日に開催G7サミットはトランプ関税で「会議は踊る、されど進まず」状態に

  4. 9

    マツキヨココカラ×コスモス薬品 節約生活の味方ドラッグストア大手を比較

  5. 10

    「プーチン心停止で影武者代行」情報…訪中大失敗のストレス、ロ国内に広がる大統領5選は無理の空気

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも