「小さいおうち」中島京子氏が語る安倍政権の危うさ、怖さ
安倍政権になって民主主義の底が抜けた
山田洋次監督の映画「小さいおうち」(松竹)が評判だ。戦争がいかにして、ふつうの人々の生活に忍び込んでいくのかを描いたものだが、ゾッとするのは今の時代との類似点だ。ちょうど、幻に終わった昭和15年の東京五輪が決まった頃で、人々は五輪招致と好景気に浮かれている。日中戦争が始まるが、誰も悲惨な結末を予想せず、三越の戦勝バーゲンなどに足を運び、「勝った」「勝った」と騒いでいたのだ。「今の空気に似ていて本当に怖くなる」とは映画の原作者で直木賞作家の中島京子さん。安倍首相に映画と本を見せたいくらいだ。
――小説を書かれたのは2008年ですよね。小さなおうちに戦争の影が忍び込んでいく。ついにはおうちは焼けてしまう。驚くのは本当に戦争が悲惨になるまで、ふつうの人々に悲愴(ひそう)感がないことですね。裏を返すと、人々が気づかないうちに、戦争が泥沼化し、気がついたら後戻りがきかなくなった。戦争って、そんなふうに始まるんですね。
教科書には満州事変があって、日中戦争、太平洋戦争が始まり、学徒出陣があって終戦みたいな歴史的事実だけが書いてありますよね。みんな反対したけど、戦争になった。ハチマキ巻いて竹やり持って戦ったと。でも、祖母からは当時も三越で買い物したとか聞かされていて、何か教科書に書かれているのとは随分、イメージが違うなと思って、調べ始めたんです。そうしたら、当時の人々も買い物に行くし、子供の受験で悩んだりして、結構、ほのぼのとしているんです。今の私たちとメンタリティーが変わらなかった。そうしたら、非常に親近感を覚えましたね。