著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

スポーツの本当の強化とは切り捨て「不平等」を決断する力

公開日: 更新日:

 2000年のウィンブルドンでのことだ。センターコートの記者席と隣り合わせの一般席に、日本人の老夫婦が腰をおろした。逆側から見ていた元国際テニス連盟副会長の川廷栄一氏が「君の隣に座った方がテニス協会の新しい会長です」と教えてくれた。

 盛田正明氏はグランドスラムには必ず奥さん同伴で訪れ、奥さんが他界されてからしばらくは姿を見せなかった。ソニー創業者の一人、盛田昭夫氏の弟ということは知られている。

 東京工業大を卒業後にソニー(当時は東京通信工業)に入社し、東北大学の研究生として3年間、仙台で過ごした。この頃にテニスにハマった。

 ソニー・アメリカのCEOとして渡米した1980年代に知り合ったのがIMGの創業者マーク・マコーマックだ。マコーマックはゴルフのアーノルド・パーマーと同級生だった縁で、弁護士からスポーツビジネスの新分野を確立させた人物。ゴルフからテニスへと事業を発展させ、マコーマックの紹介で盛田氏はジミー・コナーズ、モニカ・セレシュといったトップスターとも昵懇だった。

 ウィンブルドンの席もマコーマックの席で、川廷氏は「これから私が席を用意しないと……」と言った。日本テニス協会会長が一企業とのつながりを印象付けるのはまずいという“常識”だ。逆の意味で、それは盛田氏の懸念でもあっただろう。

 盛田氏は2000年にテニス協会の会長に就任する以前に、独自の強化構想を描いていた。インターハイ、国体、大学王座を目標にする国内状況から世界の舞台に立つ選手は出ない……どの競技にも言えることだが、国境を超えた世界ツアーに根差すテニスは、学校体育に根を張った日本のスポーツ観から最も離れたところにあるからだ。

 畏友マコーマックの協力を得てIMGアカデミーとの連携が具体化し、00年に2人の女子選手を送り出した。会長になった年である。財団法人化が03年で、錦織圭は第4期生。当時は公募制ではなく候補生の一本釣りだったため、候補に外れた関係者から公私混同を指摘する声も出てきた。しかし、それもまた想定内だっただろう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「超ド級国民的アイドル」の熱愛はSnow Manの宮舘涼太!「めめじゃなかった…」ファンの悲喜こもごも

  2. 2

    中道・小川淳也代表“オガジュン構文”の破壊力は期待以上? 代表質問で「暮らしを『支えて』」×5回炸裂

  3. 3

    熊谷真実、熊田曜子…当たり前の常識を知らない芸能人の言動が炎上を誘発

  4. 4

    高市独裁政権に立ちはだかる「新・参院のドン」石井準一幹事長の壁

  5. 5

    【ザ・ベストテン】に沢田研二が出られなかった日は桑田佳祐が出てきた日

  1. 6

    高市首相の大誤算!「私の悲願」と豪語の消費税減税に世論「反対」多数の謎解き

  2. 7

    侍Jリリーフ陣崩壊で揺らぐ屋台骨…現場で高まる「平良海馬を再招集すべき」の声

  3. 8

    国民民主の“お嬢さま候補”が運動員買収容疑で逮捕 自爆招いた強すぎる上昇志向と国政進出への執着心

  4. 9

    中井亜美フィーバーに芸能界オファー殺到…CM億超えも見据える「金のタマゴ」のタレント価値は

  5. 10

    宇多田ヒカルが「蕎麦屋」投稿批判に反論も再炎上 旧ジャニファンの“恨み”とユーザーが見過ごせなかった一言