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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

“国境なき選手団”がゆえ…東京五輪400mリレーが抱える難題

公開日: 更新日:

■「リレー合宿をやるから来い」とは言えない場所にいる

 リレーが日本のお家芸となったのは、今世紀に入ってアンダーハンドパスを採用してからだ。

 このパスの特徴は、リレー段階での速度維持。渡す側と受ける側の双方が加速状態で、流れ作業の機械工程のようにバトンを相手の手のひらに収める。

 別に日本の発明ではなく、1964年の東京大会では、全チームがアンダーハンドパスだった。オーバーハンドパスが一般的なのは、アンダーハンドが難しいからだ。前走者はできるだけ次走に接近、次走は加速する腕振りの途中でバトンをもらう……相互の歩幅やリズムを体で覚える精密機械のようなチームワークは、陸上が個人競技だけに難しい。国内にとどまり、合宿をやって同じ釜の飯を食えた日本だからできた技術ともいえるだろう。

 このアイデアを提案したのは、奇才のスプリンター高野進だった。2001年のことである。末続慎吾に、海外に出さず200メートルの日本記録を更新させた有能な指導者だが、いずれも常識にとらわれず、時代と現場を見据えた成果だった。

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