今も大事に取ってある野村野球が詰まった4冊の大学ノート
その1発目のミーティングで度肝を抜かれました。今でこそ野村ノートは有名ですが、いきなり人生論から入る指導者なんて見たことも聞いたこともない。人生とは、人間とは、社会人とは……そういった話が1週間くらい続きました。
なんというか、まるで企業の新入社員の研修のようでした。高卒でプロ入りした僕は、サラリーマンの世界の実際のところはわかりません。ただ、そのミーティングで「この人は凄い」と心底思ったのは事実です。今でも思いますが、あれは本当に貴重な時間でした。
■野球をやめてからの方が人生は長い
中でも「人にどう見られているか、考えた上で野球をしなさい」という教えは新鮮でした。
「野球に関わっている時間より、野球をやめてからの方が人生は長い。だからしっかりした社会人になるのが大事」
口を酸っぱくして、そう繰り返されました。
人生論、そして野球の話などをホワイトボードに書いてはしゃべり、また書いて……。僕ら選手は必死にノートを取る。ミーティングはだいたい1日1時間半から2時間くらいですけど、時には3時間近くになることも珍しくなかった。話し好きですからね、野村監督は。
「話が乗ってきたから、もう少し続けるか」
とか、
「ちょっとキリがいいところまで話させてくれ」
なんて言って、結局、夜間練習が中止になったことも何度かありました。