五輪強行開催の損失は“中止で4.5兆円”超えの最悪シナリオ

公開日: 更新日:

「東京大会を国民の皆さま方が安心し、やってよかったと思ってもらえる大会にすることが私にとっての務めと決意した」

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子新会長(56)が19日、組織委本部で職員を前に挨拶。「国民に信頼され、安心と安全の東京大会が開催できるように全力を尽くす」と言った。

【写真】この記事の関連写真を見る(09枚)

 とはいえ、現状は「安心」「安全」「信頼」とはかけ離れている。世界のコロナ禍は沈静化の気配が見えず、日本も緊急事態宣言の期間を1カ月延長した。森喜朗前組織委会長(83)の舌禍もあり、ネット上を中心に五輪中止論があふれている。橋本新会長は森氏を組織委の役職に就けない方針を固めたというが、新会長は同氏の「娘」を自任するだけに、これで影響力がなくなるとは思えない。あくまで事態の沈静化を図るのが目的だろう。

 五輪中止ならば約4.5兆円の経済損失(関大名誉教授・宮本勝浩氏の試算)につながるともいわれており、五輪スポンサーの巨大メディアは連日のように、これを引き合いに出している。しかし、一連の報道に異を唱えるのは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏だ。

「都や、組織委は『アスリートファースト』と言っていますが、五輪は金稼ぎの道具になっている。金のために国民の命を危険にさらして開催するのは、国際社会において日本の立場をおとしめる行為ですよ。失う国際的な信用を修復させるのは、簡単なことではありません。これは数字に表れる経済損失よりもはるかに大きい損失です」

 強行開催することでむしろ、4.5兆円を上回る損失を被るというのだが、具体的にどんな損失が考えられるのか。

「私も東京五輪に関わっているので、公式回答では『やった方が良い』としか答えられませんが……」と、五輪と経済効果に詳しい専門家は匿名を条件にこう言った。

「経済効果として、五輪開催後の外国人観光客の増加が挙げられます。しかし、そもそもの大前提として『開催がきっかけで観光客が激増する』というわけではありません。まず、大会前には外国人観光客を受け入れる土壌の整備が不可欠です。そして、開催を通じていかに国際交流が大事なのかということを人々が共有し、『大会後も継続していこう』と観光地や地域みんなで努力する姿勢があって初めて、観光業における五輪のレガシーになるのです」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘