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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

東京五輪サッカー代表DF吉田麻也「無観客五輪の再考を」発言の願いを叶えたい

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Jリーグのデータ蓄積やエビデンスも水泡に帰す

 彼らが主戦場とする海外に目を向ければ、7月11日(日本時間12日早朝)にロンドンで行われたユーロ(サッカー欧州選手権)決勝のイングランドーイタリア戦に象徴される通り、6万人のサポーターの中で熱戦が繰り広げられた。

 世紀の一戦を実際に見たという日本人駐在員によれば「事前に簡単な抗原検査を実施し、保健局に申告してから会場に行く形だったが、入場ゲートでの陰性証明の確認はなかった。マスクに関しても、自席にいる時だけ外していいというルールだったが、誰も守っていなかった」という。

 英国の場合、ワクチン接種率53%と日本よりはるかに高いことが追い風になったのは間違いない。が、それ以上に「どうせならリスクを冒してチャレンジする」というマインドがあったから、有観客が実現した。「ゼロリスクの日本人の価値観とはかけ離れている」と、上記の駐在員は指摘する。

 日本のワクチン接種の遅れは確かに痛かったが、スポーツイベントでクラスターが発生していないというエビデンスを無視したこともいただけない。

 コロナ禍に突入した2020年から、Jリーグは産業技術総合研究所と組んで、1月4日のルヴァン杯決勝などで最大2万4000人規模の観客を入れて実証実験を行い、マスク着用率やトイレの二酸化炭素濃度を計測。帰宅時の分散退場を促すとともにNTTドコモの協力も仰ぎ、帰宅途中に移動リスクの検証まで行っているのだ。

 このデータ蓄積によって、五輪有観客に向けて前進していたはずだったが、4月に3度目の緊急事態宣言が出た際、「スポーツイベントは基本無観客」という政府方針が出され、ヤリ玉に挙げられたことで努力が水泡に帰す可能性が高まった。「開会式に1万人が入っても感染リスクはゼロ」というスパコン富岳の検証データが7月初旬になって出されても、国民の反対論は覆らない。

 なぜもっと早い段階から検証データを粘り強く発信しなかったのか、と言いたくなる。

 人流増加を危惧するのなら、開催地の小学生だけの入場に限るなど、講じられる手段はあったはず。せめて「五輪の負の遺産」を背負う若い世代には、何とか生観戦させてあげられないのか。

 吉田麻也の言うように、今から再考を強く願う。

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