セ・パの格差は埋まったのか? 両リーグを知るOB2人が2022年交流戦を大展望

公開日: 更新日:

 24日から始まるセ・パ交流戦。昨年はセが12年ぶりに勝ち越したが、今季はどうなるのか。両リーグを知る球界OBに話を聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 2005年にスタートした交流戦は、パの圧勝の歴史と言っても過言ではない。昨年まで16度(20年は中止)にわたって繰り広げられた戦いで、セの優勝は12年、14年の巨人、18年ヤクルトの3回。リーグとして勝ち越したのも、09年と昨季のみだ。

 開始当初はそこまで差があったわけではない。05、06年はわずか1勝差。07年に8勝差まで開くも、翌08年は2勝差、そして09年に初めてセが勝ち越した。

 しかし、10年はセが59勝、パが81勝で歴代最多の22勝差に開くと、11年も21勝差。13年も20勝差だった。

■投手力はパ・リーグが上

 そこで語られてきたのが、セ・パ間の格差だ。

 ヤクルト(07~13年)、ソフトバンク(15~19年)でコーチを務めた飯田哲也氏は「今も差があるのは間違いないでしょう」と、こう続ける。

「特に投手力に関してはパの方が上です。ここ十数年、球界を代表する投手といえば、その多くがパの選手だった。松坂(西武)、ダルビッシュ、大谷(いずれも日本ハム)らメジャーで活躍した投手もパ出身が多い。最近でも、千賀(ソフトバンク)、山本(オリックス)、則本(楽天)、佐々木朗(ロッテ)らがいる。セにも好投手はいますが、彼らのように試合前から名前だけで相手を圧倒できる投手は何人いるのか」

 それでもここ数年はセも健闘している。13年を最後に20勝差をつけられることはなくなり、昨季は優勝こそオリックスに譲ったものの、49勝48敗で09年以来12年ぶりとなる勝ち越しを決めた。

 飯田氏が言う。

「昨季の交流戦では、セもパの好投手をうまく攻略できるようになってきた印象です。パの野球は『力VS力』。剛腕投手と強打者が真っ向勝負でぶつかるケースが多い。一方、ファウルで粘り、バントで送って確実に1点を取る野球は、セがパ以上に徹底している」

粘りの野球はセ・リーグ

 ソフトバンクの松田も日刊ゲンダイがインタビューした時、「パの打者は引っ張ってくるので、三塁に痛烈な打球が飛んでくる。セ相手の交流戦だと、ほとんど僕の守る三塁には飛んでこない」と話していた。

「追い込まれてもなお引っ張るのか、それとも逆方向を狙うのか。その意識の違いでしょう。セはファウルで粘れる打者も多い。ヤクルトでコーチをしていた時代、交流戦のミーティングでは、『とにかく先発に球数を多く投げさせよう』と作戦を立てた。昔と違って、今は先発投手の球数に神経質になっています。粘って粘って、長くても六回までに100球くらい投げさせて交代に追い込みたい。好投手に対しては、早めに降板させるのも作戦のひとつですからね。一方、ソフトバンクでは『各打者は自分のスイングをしよう』という方針でした。もちろん、策を講じないわけではありませんが、セほど緻密な印象はありませんでした」(飯田氏)

 一方、日本ハム(06~08年)、中日(12、13年)でコーチ経験のある平野謙氏は、「野球のスタイルの差はありますが」と、前置きしてこう続ける。

「セ・パの実力にそこまで大きな差があるとは思えないんです。昔は『人気のセ、実力のパ』と言われており、私も87年オフに中日から西武にトレードで移籍しました。それでも『パの方がレベルが高い』と思ったことはありません。ただ、別の意味で差は感じていましたね。移籍当初は『こんなにお客さん少ないの?』と驚きましたし、球団発表で観衆5000人といっても、実際は数えられるほどだったことは何度もあった。そうなると、パの選手は『セだけには絶対に負けられない』と気持ちの上で大きな差が出る。セ・パ間の集客、人気格差は交流戦が始まった後もしばらく続いていた。近年、ようやく格差が縮まり、セへの対抗心が薄まったことが接戦につながっているのではないか。トータル的な数字はともかく、今のセとパは均衡している印象ですね」

■パ・リーグにとって転換期

 ただし、今後の交流戦はセ・パで優勝を分け合うようなことになるかといえば、話は別だ。

 セがパに22勝差をつけられたのは、セが初めて勝ち越した09年の翌10年だ。12年にセが1勝差と迫った翌13年も、20勝差をつけられた。14年も同じく1勝差だったが、15年は17勝差。セが追うたびに、パが突き放すいたちごっこが続いている。

「パもペナントレースと同じような『力VS力』ではなく、どうやってセを攻略すべきか、年々研究が進んでいますからね。例えばソフトバンクの藤本新監督は就任直後から、セに近い野球、つまり粘り強く1点を取る野球をやろうとしている。かつてのパは交流戦の順位がリーグ戦にそこまで大きく影響しなかった。交流戦に弱かったセは『ここでコケたら、シーズンもコケる』というイメージ。ヤクルトのコーチ時代も、常にそう思っていましたから。セ・パの格差がなくなれば、パ球団も同じような危機感を覚えるでしょう。ある意味では、今年の交流戦はパにとっての転換期。対セに向けた対策に注目しています」(飯田氏)

「もし、セ・パ間の格差がなくなったとすれば、以前のようにホームとビジターで2カード行うなど、36試合に戻してもいいのではないか。現在は18試合制。年によって交流戦の主催試合があったりなかったりする上に、リーグ戦の成績にも影響する。とても公平とは言えませんよ」(平野氏)

 交流戦は大負けが続いていたセの主導により、07年に36試合から24試合、15年からは18試合に減少した。今年もセとパが互角に戦うようならば、再度改革してもいいのではないか。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  3. 8

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  4. 9

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 10

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明