元川悦子
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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

34歳のベテラン吉田麻也が見据える未来「もう一度、アジアの頂点を取り戻す」

公開日: 更新日:

吉田麻也(シャルケ・DF/34歳)

「ロシアW杯決勝まで行った相手に120分、互角に戦えたのは価値あること。進歩した証じゃないか。でも、ああいう試合を勝ち切る力を身に着けないといけないのは確か。ベスト8への道は1日にしてならずですね」

 カタールW杯の決勝トーナメント1回戦・クロアチア戦にPK負けした後、代表キャプテンは神妙な面持ちでこう言った。

 が、次なる挑戦に自身も加わるかどうか、明言しなかった。

「全ては監督が決めること。僕はシャルケでのプレーを評価される立場だから。全てはそこにかかっていますね」と本人はブンデスリーガ1部残留争い真っ只中のチームの戦いに集中している。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 1月末から2月中旬にかけて欧州視察に出向いた森保一監督が、真っ先に会う時間を作ったのは就任して4年間、苦楽を共にした吉田だった。

「ご飯をご馳走になりました」と34歳のベテランは笑顔で語ったが、代表継続について深く話し合うことはなかった様子だ。

「CBは若くていい選手がいる。滉(板倉=ボルシアMG戦)はもちろんいいし、冨安(健洋=アーセナル)もいい。洋輝(伊藤=シュツットガルト)も試合に出ているし、これから新しい選手も出てくると思う。やっぱり大事なのは、監督がどこを見るか、じゃないかな。現時点なのか、1年後(2024年アジア杯)なのか、3年後(2026年北中米W杯)なのか。僕には分かりません」と本人は煙に巻いたが、指揮官が何を優先するかによって、W杯2大会出場のベテランの扱いは変わってきそうだ。

 とはいえ、本人のサッカーに対する情熱は衰えるどころか、燃え盛る一方だ。それは森保監督も大いに認める点である。

■もっとサッカーをやりたい

「もっとサッカーをやりたいですね。内田(篤人=JFAロールモデルコーチ)君がテレビに出て、槙野(智章=品川CCテクニカルアドバイザー)君がバラエティーに出てるのを見ると(引退しないで)もっとサッカーをやりたいと強く思う(笑)。そのためにはここで生き残らないと契約がないから頑張ります」と吉田は軽妙な語り口ながら、何としてもシャルケをブンデスリーガ1部に残留させる構えだ。

 内田が在籍した頃は欧州CLにも参戦していた名門のシャルケだが、コロナ禍の無観客試合や1年前のウクライナ侵攻によるロシアのエネルギー企業ガスプロムのスポンサー撤退などによって経営難に陥っている。

 昨季1部昇格の立役者となった板倉の買い取りさえも見送らなければならなかったほど。今季も無名の若手中心に戦っていたが、W杯前の前半戦終了時点では、ダントツの最下位に甘んじた。

「1月末に閉まった冬の移籍期間で一体、何人取ったのか……。(英プレミアリーグに昇格した)ノッティンガム・フォレスト(昨夏と今冬に約30人を補強)の次に補強したんじゃないかな(苦笑)。予算がない中でやりくりして、安くていい選手を見つけるのは簡単じゃない」とクレバーな吉田はチーム事情を理解し、新加入選手たちと意思疎通を図りながら守備修正に尽力してきた。

 その成果もあり、1月29日のケルン戦から4試合連続無失点で引き分けに持ち込み、2月25日のシュツットガルト戦と5日のボーフム戦に連勝して勝ち点「10」を積み上げ、ブービーの17位ながら最下位を脱出した。

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