川上は通算18度の犠打を記録しているが、これが唯一のスクイズ。この日の打順は6番で、4番の座を奪った長嶋は26、27号を放った。長嶋は本塁打王に驀進し、対して川上はフォア・ザ・チームのスクイズ。「プロ野球ナンバーワンの座」の交代を告げる歴史的な“神様のスクイズ”だった。
川上は監督になってから長嶋、王貞治という最強打者にも送りバントを指示した。長嶋には4度(通算5度)王には8度(通算12度)。勝利のためには天下のON砲にもバットを振らせずに犠打を命じた。不滅の9連覇の底力をみる思いだったが、自らのスクイズ体験が「名より実を優先」したといえる。