伝説的なヤジに反発した鈍足本塁打王・野村克也がホームスチール! 実は7度も本盗成功している
テレビの時代劇を見ていたら「火事と喧嘩は江戸の華」と懐かしいセリフ。これで思い出したのが「ヤジと乱闘はプロ野球の華」。昭和のプロ野球は個性派が多く、グラウンドでは力自慢に業師がゴロゴロ、遺恨試合はザラ、スタンドからはヤジの応酬ーーと異常な熱気で盛り上がった。
そのヤジで思い出した試合がある。1972(昭和47)年5月18日の阪急-南海戦、場所は京都の西京極球場。
半世紀以上も前の試合がすぐ頭に浮かんだのは、最も記憶に残るヤジと鈍足本塁打王の満塁からのホームスチール成功が重なったからだった。
「人気のセ、実力のパ」と評された時代。パの試合の多くは観客が少なく、ヤジの声がよく通った。なにしろ「寝ながらご覧になれます」と冷やかされたほど空席ばかりで、外野席はカップルのお楽しみ場でもあった。
プレーボールとなって間もなく、阪急側のスタンドから声が飛んだ。
「おーい、南海ホークスよ、デパートがないのはおまえんとこだけやで」