さらなる地獄だったあの日々、痛みを訴えた脇の下のビー玉サイズのシコリをギュッと握りつぶされて…
翌日、朝起きて洗面台の前で顔を洗っていたら、鏡に映った右腕が真っ赤に腫れ、内出血していた。明らかに投げすぎ。それでも1000球のノルマはなくならない。それからほどなくして、脇の下にビー玉のようなしこりが出現した。怖くなって加藤コーチに伝えると、そのビー玉を力いっぱい握り潰され、「よし、これで治ったな」。その後もしばらくしこりが残っていたが、そのうちなくなっていた。
日が沈み、ようやく全体練習が終わったと思ったら、今度は「むっちー」こと村田広光トレーニングコーチによる陸上トレーニングが始まる。キツかった練習のひとつが「400メートルリレー」。全員で400メートルではない。「1人400メートル」だ。選手を5つのグループに分け、優勝チームには星野仙一監督から賞金が出た。ひとり2万円。安月給だった若手たちは必死で走ったが、最後の100メートルは足を動かそうにも全く前に進まなかった。
鬼の「村田教室」は星野監督が見に来るとさらに過激になった。わざわざ来なくていいのに……と何度思ったことか。監督が来るから、むっちーもいつも以上に張り切るのだ。