著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

MLBコミッショナーがしつこく訴える「球団拡張案」の真の狙いとは?

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 また、これまで開拓されていない地域に大リーグ球団が本拠を置くことは新たな顧客の掘り起こしにつながる。

 ロッキーズやダイヤモンドバックスは、約72万人の人口を持つデンバーと約167万人が住むフェニックスという市場を大リーグにもたらした。

 こうした利点とともに、懸念点もある。

 まず、球団の拡張により、一時的に投手の質が低下することである。1998年にマーク・マグワイア(カージナルス)とサミー・ソーサ(カブス)が年間本塁打の大リーグ記録を更新したのは、ステロイドの使用が大きく作用している。それとともに、この年に2球団が加盟したことで、本来であればマイナーリーグにいるはずの投手が昇格したことが少なからぬ影響を与えている。

 今回の球団拡張により地区の再編や新リーグの創設などが行われれば、競技水準の一時的な低下に加え、名物となっている対戦カードが減る可能性も出てくるわけで、ファンからの批判が高まりかねない。

 それでもマンフレッドは球団拡張の利点として、選手の長距離移動の負担の軽減とともに、球団経営者による選手の旅費の負担削減も指摘している。この点を考えるなら、マンフレッドの球団拡張案は、球界全体の発展という名の経営者への利益誘導という側面が強いといえるだろう。

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