3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い
この発想が都市マラソンの隆盛→プロ化に結び付いて、90年代にケニアが参入。お家芸を誇った日本のマラソンは、記録の上昇気流に押されて先頭グループを離れた。しかし、果たして低迷は記録のせいだったのだろうか。
洋の東西を問わず、かつて走るのは泥棒だけと言われた。人は目的があって走り出し、市民ランナーには個々の目的がある。プロを自称するなら、「世界」とか「自己ベスト」など曖昧ではない、目的の可視化、連帯感が欲しい。その点、大迫のマラソンは分かりやすい。
実業団連合とアールビーズ社が展開した日本記録報奨金制度で、1億円を2度手にした。準備は周到で、実業団生活を1年で切り上げ、妻子を連れて渡米。ケニア合宿など世界の流れを体感し、研究し、走り出している。目的-手段-結果が明快で、ラストランの覚悟で臨んだ21年・東京五輪のレース運びも印象的だった。大迫はアフリカ勢の力を熟知していた。王者キプチョゲのスパートにはつかず、計算した自分の走りで入賞……。
川内優輝も“プロ”の肩書にふさわしく、分かりやすい。スピードも常識もないが、自分の意志を貫き“市民ランナーの星”となり、ボストンマラソンのビッグタイトルまでゲットしてしまった。


















