「名取洋之助」白山眞理著
■報道写真家の先駆者の仕事の全貌を概観
日本人として初めてアメリカ「LIFE」誌の表紙を飾った名取洋之助は、報道写真家の他にも編集者、プロデューサーなどさまざまな顔を持っていた。本書は、写真作品はもちろん、多岐にわたる氏の仕事の全貌を紹介するビジュアルブック。
成績劣等、札付きの不良少年だった名取は、大学へ進学できず、1928年、知人のいるドイツに向かう。現地で、年上の工芸デザイナー・エルナと結婚。彼女が撮影した写真を組み写真にして写真週刊誌に投稿し、採用された氏は、自分の生涯の仕事がジャーナリストとしての写真家だと思いついたという。その後、新聞社の契約写真家になり、満州事変で世界の注目が集まった日本に特派員として赴任。しかし、ヒトラー政権下で外国人ジャーナリストの就業が禁じられたためドイツに戻ることができなくなり、日本で外国向けグラフ雑誌「NIPPON」を創刊する。
軍をテーマにした組み写真(写真)をはじめ、隠れキリシタンの末裔が暮らす長崎の福江島を訪れた際の作品や、1936年に3年ぶりにドイツに向かう途中で立ち寄った朝鮮・満州での作品、ベルリン・オリンピックや、その翌年のアメリカ横断、そして戦後に重ねた世界各地での撮影行での成果などを網羅。芸術的な写真を軽蔑していたという名取の作品からは、被写体の人々が生きた「時代」の空気が生々しく伝わってくる。


















