「桜色の魂」長田渚左著

公開日: 更新日:

 1964年の東京五輪、女子体操の金メダリスト、ベラ・チャスラフスカは、それから50年後、東日本大震災で被災した子供たちを、祖国チェコのプラハに招待した。チャスラフスカは、日本と日本人をこよなく愛している。何度かのインタビューを通じてそれを強く感じていた著者は、日本人との心の交流を軸に、彼女の半生をたどった。

 1960年、18歳だったチャスラフスカは、ローマ五輪で日本の体操選手たちと出会う。重圧のかかる試合の前でも明るく、気取らず、それでいて盤石の演技を披露する。そんな日本選手に強い憧れを抱いた。中でも、東京五輪の金メダリストとなる遠藤幸雄とは、アスリート魂で交感し合い、強い影響を受けたという。

 東京とメキシコ、2度の五輪で花開いたチャスラフスカだが、その後の人生は暗転する。1968年、ソ連が祖国に侵攻。それに抵抗する「二千語宣言」に署名した彼女は、長きにわたって執拗な迫害を受け続けた。

 21年後、民主化の嵐で共産党支配が崩壊したとき、ようやく表舞台に復帰した彼女を待っていたのは、大統領補佐官としての激務だった。人生の疲れが限界を超えたのか、家族を襲ったある悲劇を引き金に、彼女は固く心を閉ざしてしまう。再起は絶望と思われたが、14年後、不死鳥のようによみがえった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です