「キャプテン サンダーボルト」阿部和重&伊坂幸太郎著

公開日: 更新日:

 物語は、ホテルのドアマンをしている田中徹が、小中からの同級生で少年野球仲間だった相葉時之と仕事中に再会するところから始まる。相葉は詐欺に遭った友人のため、アタッシェケースを持った男に部屋番号を書いたメモを渡してほしいと頼む。その業者をだまし討ちする計画なのだ。しかし、田中はその直後、同僚の黒田から外国人の商談相手に部屋番号を書いたメモを渡してほしいと頼まれる。この2つの依頼を混同したことで、相葉は命に関わる騒動に巻き込まれることに……。だが、そこに一獲千金のチャンスがあることも知り、金に困っていた相葉はかつての野球仲間を次々と巻き込みながら、イチかバチかの大勝負を始める。

 現代を代表する人気作家2人が、アイデアを出し合いながらプロットを組み立てた異色のエンターテインメント長編だ。それぞれが書いたページを淡々とつなぐリレー形式ではなく、互いの文章に手を入れ合いながら練り上げたというから驚きだ。危険すぎる世界の秘密に近づいてしまう登場人物たちの無謀な行動が抜群に面白い。あっという間に怒涛の結末へなだれ込む──。

(文藝春秋 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋