「キャプテン サンダーボルト」阿部和重&伊坂幸太郎著

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 物語は、ホテルのドアマンをしている田中徹が、小中からの同級生で少年野球仲間だった相葉時之と仕事中に再会するところから始まる。相葉は詐欺に遭った友人のため、アタッシェケースを持った男に部屋番号を書いたメモを渡してほしいと頼む。その業者をだまし討ちする計画なのだ。しかし、田中はその直後、同僚の黒田から外国人の商談相手に部屋番号を書いたメモを渡してほしいと頼まれる。この2つの依頼を混同したことで、相葉は命に関わる騒動に巻き込まれることに……。だが、そこに一獲千金のチャンスがあることも知り、金に困っていた相葉はかつての野球仲間を次々と巻き込みながら、イチかバチかの大勝負を始める。

 現代を代表する人気作家2人が、アイデアを出し合いながらプロットを組み立てた異色のエンターテインメント長編だ。それぞれが書いたページを淡々とつなぐリレー形式ではなく、互いの文章に手を入れ合いながら練り上げたというから驚きだ。危険すぎる世界の秘密に近づいてしまう登場人物たちの無謀な行動が抜群に面白い。あっという間に怒涛の結末へなだれ込む──。

(文藝春秋 1800円+税)

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