「放浪の聖画家ピロスマニ」はらだたけひで著

公開日: 更新日:

 ピロスマニ、本名ニコロズ・ピロスマナシュヴィリは、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて生きたグルジアの画家。その名は知らなくとも、あの名曲「百万本のバラ」で歌われた画家のモデルと聞けば、思い当たる人も多いのではなかろうか。ピカソをして「私の絵をグルジアに飾る必要はない。なぜならピロスマニがいるからだ」と言わしめた画家の孤高の生涯とその作品世界を紹介するアート新書。

 チフリス(現在のグルジアの首都トビリシ)を中心に、居を転々とした彼が、食べ物や酒と引き換えに店の看板や飾る絵を描いた作品は1000点とも2000点ともいわれる。しかし、現在、残っているのはわずか二百数十点。孤独と貧困の中で生涯を閉じたピロスマニだが、肖像は紙幣に、絵は貨幣に使われるほど今もグルジアの人々に愛されている。

 幼いときに両親や兄を相次いで亡くし、職を転々とした後、友人と乳製品の店を開店。その店先に掲げられた初期の「白牛」と「黒水牛」など、代表作をオールカラーで紹介しながら、解説する。

 中には、例の「百万本のバラ」に貧しい画家の切ない恋の相手として登場する女優のモデルとなった作品「女優マルガリータ」もある。ピロスマニとフランスから巡業でチフリスに来た女優マルガリータの恋の真相は分からないが、彼の死の半世紀後、西欧初のピロスマニ展がパリで開催された折、マルガリータと名乗る女性がこの絵の前に3日間通い続け、眺めながら涙を流していたという。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  3. 3

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  4. 4

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  5. 5

    ドジャース大谷が佐々木朗希への「痛烈な皮肉」を体現…耳の痛い“フォア・ザ・チーム”の発言も

  1. 6

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  2. 7

    高市早苗氏は大焦り? コバホークこと小林鷹之氏が総裁選出馬に出馬意向で自民保守陣営は“分裂”不可避

  3. 8

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった

  4. 9

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い

  5. 10

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督