「勁草」黒川博行著

公開日: 更新日:

 大阪府警特殊詐欺班の佐竹と湯川は、今日もオレオレ詐欺犯を追っている。

 年配の女が膨らんだトートバッグを肩にかけて、銀行から出てきた。間もなく「受け子」が接触してくるはずだ。茶髪の男とスーツの男が、女のあとをつけている。彼らに間違いない。佐竹と湯川は3人を追尾する。だが、すんでのところで感づかれ、現場を押さえることはできなかった。

 オレオレ詐欺は巧妙な役割分担で被害者から大金を奪い取る組織犯罪。標的のリストを提供する「名簿屋」、カモに電話をかける「掛け子」、金を受け取る「受け子」、携帯電話や架空の銀行口座を用意する「道具屋」、全てを取り仕切っている「金主」。彼らは何くわぬ顔で街に巣くっている。

 佐竹・湯川の刑事コンビと、犯人グループの下っ端、橋岡・八代の2人組の行動が時間軸を追って描かれ、時折交錯する。地を這うような捜査でじりじりと犯人グループを追い詰めていく刑事たち。社会から落ちこぼれ、中途半端に詐欺の片棒をかついで運命を狂わせていく若い男たち。登場人物それぞれに血が通い、捜査方法や詐欺の手口の描写も詳細。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  2. 2

    ヤクルト村上宗隆の「メジャー契約金」は何億円?

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希もようやく危機感…ロッテ時代の逃げ癖、図々しさは通用しないと身に染みた?

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    吉沢亮「国宝」150億円突破も手放しで喜べない…堺雅人“半沢直樹ブーム”と似て非なるギャラ高騰の行方

  1. 6

    「SIAM SHADE」DAITAがメンバー4人を提訴報道…人気バンドを巡る金銭問題と、「GLAY」は別格のワケ

  2. 7

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希にリリーバーとしての“重大欠陥”…大谷とは真逆の「自己チューぶり」が焦点に

  5. 10

    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議