「勁草」黒川博行著

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 大阪府警特殊詐欺班の佐竹と湯川は、今日もオレオレ詐欺犯を追っている。

 年配の女が膨らんだトートバッグを肩にかけて、銀行から出てきた。間もなく「受け子」が接触してくるはずだ。茶髪の男とスーツの男が、女のあとをつけている。彼らに間違いない。佐竹と湯川は3人を追尾する。だが、すんでのところで感づかれ、現場を押さえることはできなかった。

 オレオレ詐欺は巧妙な役割分担で被害者から大金を奪い取る組織犯罪。標的のリストを提供する「名簿屋」、カモに電話をかける「掛け子」、金を受け取る「受け子」、携帯電話や架空の銀行口座を用意する「道具屋」、全てを取り仕切っている「金主」。彼らは何くわぬ顔で街に巣くっている。

 佐竹・湯川の刑事コンビと、犯人グループの下っ端、橋岡・八代の2人組の行動が時間軸を追って描かれ、時折交錯する。地を這うような捜査でじりじりと犯人グループを追い詰めていく刑事たち。社会から落ちこぼれ、中途半端に詐欺の片棒をかついで運命を狂わせていく若い男たち。登場人物それぞれに血が通い、捜査方法や詐欺の手口の描写も詳細。

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