「ぼくらの民主主義なんだぜ」高橋源一郎著

公開日: 更新日:

 朝日新聞で連載中の「論壇時評」の4年分をまとめたもの。小説家である著者が時評を開始したのは東日本大震災が起こった翌月の2011年4月。その第1回は放射能汚染を恐れて「疎開」する母子の情景から始め、テレビや新聞のみならずネットなどあらゆる場所で「震災と原発」をめぐることばがあふれている現在、この国のあらゆる場所が「論壇」となったとする。そして、この災禍を前に、壊滅した町並みだけでなく、人びとをつなぐことばもまた「復興」されなければならないと締めくくられる。

 その後も、マンガ、ラジオ、映画、ツイッター等々、従来の総合雑誌を中心にした「論壇」とは異なる分野の言説を積極的に取り上げて、「震災以後」の思考とことばのありさまを論じていく。そのキーワードが「民主主義」だ。手垢にまみれた「民主主義」ということばをどうやって新たに意味づけることができるのか。そう問い続けられている。

 民主主義を支える立憲主義も侵されつつある現在、4年間でこの国に何が起こったのか、本書で検証することが必須だ。
(朝日新聞出版 780円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも