【プロパガンダの過去と現在】「戦争法案」騒動で弱腰に終始した大手マスコミ。その裏には権力によるプロパガンダの歴史が深く横たわっている。

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「戦争と新聞」鈴木健二著

 毎日新聞で政治記者を長年つとめた著者。その人がこう言う。

 戦後70年、日本は直接戦争に巻き込まれることはなかったがゆえに日本の新聞は国益をにらみつつ報道の自由を追求するせめぎ合いを経験しなかった。そのひ弱さが、いま「平和安全法制」などの名目下で進められる戦争法案の制定をみすみす許す結果になっている。

「新聞は攻めているときは強いが、守りに回ればこれほど弱いものはない」のだ――。

 本書はこんな立場から明治・大正・昭和、そして戦後の3期にわたって日本の新聞界がいかに権力のプロパガンダと戦い、弾圧を受け、また巻き込まれて翻弄され、ときには片棒を担いできたかを詳しく検証する。

 特に戦前の東京日日新聞(現在の毎日新聞)の動きがつぶさに観察されるのは自分の出身母体だからだろう。マスコミ嫌いだがマスコミ操縦にも長けていた佐藤栄作政権の手法に触れながら、わずかな潮目の変化で激しいマスコミ論調が嘘のように引いていく過程も見逃さない。気骨の新聞人による気迫の新聞批判だ。(筑摩書房 800円+税)

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