著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「おとめの流儀。」小嶋陽太郎著

公開日: 更新日:

 スポーツ小説は数多いが、なぎなた小説は珍しい。なぎなたの試合のルールについては、たとえば中学生のなぎなたの長さが、2メートル10~25と決められていて、試合は2分間であるなど、さりげなく織り込みながら物語が進んでいくので、何も知らなくても大丈夫だ。

 なぜここで中学生のなぎなたの長さが出てくるかといえば、本書が中学生小説だからである。廃部の危機に直面していたなぎなた部に入部した中学1年のさと子を主人公にした長編なのである。まず、寄せ集めた6人の部員のキャラが立っているのがいいし、公園のベンチにいつも座っている競馬おじさんや、朝子先輩に食って掛かる剣道部のキツネなどの脇役までもが活写されているのもいい。

 なによりもいいのは、このなぎなた部の目標だ。通常のスポーツ小説では、県大会や全国大会などで勝つことを目指していく。クライマックスはそういう試合であることが多い。しかし本書は、そういう大会を目標にしていない。彼らの目標はなんと剣道部を倒すこと。なぎなたと剣道の対決であるから、練習試合にすぎないのに、それが彼らの最大の目標なのだ。この異色の構造がいい。青春小説の佳作として読まれたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福山雅治「フジ不適切会合」参加で掘り起こされた吉高由里子への“完全アウト”なセクハラ発言

  2. 2

    福山雅治「ラストマン」好調維持も懸案は“髪形”か…《さすがに老けた?》のからくり

  3. 3

    夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及

  4. 4

    参政党・神谷宗幣代表 にじむ旧統一教会への共鳴…「文化的マルクス主義」に強いこだわり

  5. 5

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  1. 6

    福山雅治、石橋貴明…フジ飲み会問題で匿名有力者が暴かれる中、注目される「スイートルームの会」“タレントU氏”は誰だ?

  2. 7

    広陵問題をSNSの弊害にすり替えやっぱり大炎上…高野連&朝日新聞の「おま言う」案件

  3. 8

    桑田真澄が「KKドラフト」3日後に早大受験で上京→土壇場で“翻意”の裏側

  4. 9

    参政党・神谷宗幣代表の「質問主意書」がヤバすぎる! トンデモ陰謀論どっぷり7項目に政府も困惑?

  5. 10

    「時代に挑んだ男」加納典明(38)同年代のライバル「篠山紀信と荒木経惟、どっちも俺は認めている」