著者が「忘れられない」という安倍首相の冷たい言葉

公開日: 更新日:

「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」講談社/蓮池透著

「拉致問題を追い風にして総理大臣にまで上り詰めた」安倍晋三に対して、「北朝鮮による拉致被害者家族会」の事務局長だった蓮池透が挑戦状を叩きつけた。

 安倍が拉致問題でがんばったというのは神話であり、被害者のことなど考えていなかったというのである。「忘れえぬ安倍晋三の冷たい言葉」と題して蓮池は書く。

 安倍らが中心となって国会に提出された「拉致被害者支援法」では被害者1人当たり月額約13万円足らず(子どもは3万円)を支給するとあったが、金額が低すぎるという指摘を無視して法案は成立した。

 それで蓮池が、

「国の不作為を問い国家賠償請求訴訟を起こしますよ」

 と安倍を追及すると、安倍は薄ら笑いを浮かべながら、

「蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ」

 と答えたという。

 蓮池は「いったいどっちの味方なのか」と怒る。そして、「大変だとしても、そこを動かしてくれるのが政治家というものではないか。あの言葉をいまでも忘れることができない」と続ける。

 蓮池の弟、薫たちが帰国した時、北朝鮮に戻す約束を蹴ったのが安倍だという神話も、蓮池は断固として覆す。蓮池の説得によって薫は戻らないという決断を下したのである。

 それを知って「渋々方針を転換」し、「結果的に尽力するかたちとなった」のが安倍と拉致問題担当相の中山恭子だった。

「あえて強調したい。安倍、中山両氏は弟たちを一度たりとも止めようとはしなかった。止めたのは私なのだ」という蓮池の悲痛な叫びを安倍はまともに受けとめようとはしていない。

 だから、「政治利用」を続ける。2014年の衆議院選挙で安倍は新潟2区で立った自民党の細田健一の応援演説に来た。

 柏崎で開かれたこの演説会に薫が招かれたのだが、多忙を理由に断ると、何と両親が駆り出されたという。そして、蓮池薫さんのご両親が来ておられます、と紹介された。

「結局、安倍さんのダシにされただけだね」

 と母親は嘆いた。安倍を「鉄面皮」と批判した福島瑞穂に対して、自民党は議事録からの削除を要求したが、鉄面皮そのものではないか。

★★半(選者・佐高信)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

■関連キーワード

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言