鉄ちゃんでなくても面白い鉄道本特集

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 乗り鉄、撮り鉄、押し鉄、音鉄……鉄道をこよなく愛する人々の潜在数は計り知れない。さらには、それぞれの分野を詳細につづった鉄道本も数多い。鉄ちゃんでなくても絶対面白く読める新刊書4冊を紹介しよう。

 4ページごとに激しくうなずき、8ページごとに思わず噴き出す。星の数よりも多い鉄道関連本で、かつてこんなに笑わせてくれる本があっただろうか。

 ありとあらゆるデータから首都圏鉄道の特徴をあぶり出し、悲喜こもごもの格差をまとめあげたのが「沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SBクリエイティブ 820円+税)である。

 著したのは、首都圏鉄道路線研究会。いわゆる「鉄ちゃん」のフリーライター4人が執筆している。

 各鉄道路線に「勝ち組・負け組」の格付けを行うも、その根拠は明確だ。定義としては「ブランドタウンが多い」「接続路線が多い」「遅延が少ない」「混雑しない」「乗客が多い、あるいは増えている」「運賃収入が多い」沿線を勝ち組とする。全18路線のランキングはぜひ読んで確かめてほしい。予想とは異なる結果に驚くかもしれない。

 なによりも、各路線の特徴や性質を絶妙な語彙力で的確に表現。これが思わずうなるうまさなのである。

 たとえば、ワンカップが似合う酒盛り列車と呼ばれても決してめげない常磐線、「ダァシャーリマス(ドアを閉めます)」の独自アナウンスで時短を実現する京急本線、事実上「あきばエクスプレス」のつくばエクスプレス、貧乏くさかったり高級住宅地だったりと目まぐるしい中央線、いも電車の田舎くささから脱却を図るも失敗、自虐性を発揮する東武東上線、相互乗り入れがない不便さを「孤高の路線」といってごまかす西武新宿線……鋭い観察眼と機知に富んだ表現力。

 しかしながら行間には鉄道愛があふれ出ている。利用者の心の叫びに耳を傾けている証拠だ。鉄道会社は資料として参考にするといいかも。

 ただし、鉄ちゃんの熱い思いだけで紹介しているのではない。沿線上で、どの新聞が売れるか、進学塾や信用金庫の数、沿線住民の平均所得に金融資産、賃貸物件の賃料、痴漢摘発件数など、緻密なデータをもとに冷静沈着に比較しているのだ。

 その目の付けどころといい、微に入り細に入りのデータといい、お役所が出す通り一遍のモノとはワケが違う。鉄道を愛すると同時に、乗客の暮らしに根付いた、有益な情報が満載である。

 引っ越しや転職、マイホーム購入、子供の受験をこれから迎える人は、これを参考にしてほしい。ちなみに、娘を痴漢から守るなら半蔵門線など、あくまで仮説ではあるが説得力は十分。

 メディアでよく取り上げられる「住みたい街ランキング」とはまったく異なる視点で、その駅や路線、ひいては街の本質が見えてくるはずだ。自分が利用している路線の「立ち位置」を確認すれば、もっと愛着が湧いてくるに違いない。

「鉄道ミステリーの系譜」原口隆行著

 探偵小説から推理小説、そして鉄道ミステリーへ。近現代文学作品から選び抜いた「鉄道モノ」を時系列に紹介。作品の系譜を眺めていくと、当時の社会情勢や世相だけでなく、鉄道通俗史の趣も味わえるという。

 鉄道ミステリー草創期は英国文学から始まる。日本では、江戸川乱歩と同時代の作品にクローズアップ。葛山二郎「股から覗く」、夢野久作「木魂」など風変わりな名作を紹介。戦後復興期には、横溝正史をはじめ、国鉄マンだった海野詳二や芝山倉平の作品に触れる。蒸気機関車、電気機関車、夜行列車……今となっては懐かしい響きだ。

 そして、高度経済成長期は国鉄黄金期。時刻表トリックの名手・鮎川哲也、鉄道公安官に光を当てた島田一男、社会派の重鎮・松本清張作品を取り上げる。最後は国鉄の終焉期。旅情と郷愁の西村京太郎作品で締めている。日本の鉄道の黎明と衰退を小説で学ぶこともできる。
(交通新聞社 800円+税)

「東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!」栗原景著・撮影

 ビジネスで、帰省で、普段何げなく乗っている東海道新幹線。その車窓からの風景が、タイトル通り、こんなに面白くなるとは! 東京駅~新大阪駅間の謎のスポットや名所旧跡、はては野立て看板まで、独特な視点で車窓風景を楽しむコツを紹介。実は、東京タワーやレインボーブリッジ、小田原城に名古屋城、古墳も見えればラブホテルも見えるし、謎の物体にも遭遇できる。厳選した全82カ所を紹介しているが、どちら側に座ればよいか、起点駅から何分かなどの詳細な情報も記載。また、目撃難易度も★の数で評価。持参して乗り込めば、大人も子供も楽しめる。著者は謎のスポットを解明すべく、現地を訪れ、取材も敢行。「なぜここにトトロが?」「古墳風の緑地の正体は?」など、読者の疑問にも鋭意答えるべく奮闘。富士山だけではない、東海道新幹線の魅力が伝わってくる渾身の一冊。
(東洋経済新報社 1000円+税)

「ローカル鉄道という希望」田中輝美著

 20年かけてJR全路線に乗った「乗り鉄」の女性ジャーナリストがローカル鉄道の光と影を追ったルポ。きっかけは千葉県の銚子電鉄の車両復活。脱線事故で廃線の危機に見舞われた銚子電鉄を見事に救ったのが、高校生が呼び掛けたクラウドファンディングだった。

 記者魂で「演出」を疑った著者は現地に飛び、真実を知る。邪推を恥じた。取材を進めるうちに、世間一般がもつ「ローカル鉄道はお先真っ暗」のイメージも覆されたという。トイレの改修から始め、活気と乗客を呼び込んだ兵庫県の北条鉄道、高値の本格コース料理を味わえるレストラン列車を立ち上げた熊本県の肥薩おれんじ鉄道など、新奇性で耳目を集めた事例を多数取材。

 単純に黒字になればいいわけではない。人・モノ・金をどう動かすか、地域にどう貢献するか。課題は山積みだが、可能性と未来はある、という根拠を綿密に探り出した一冊。(河出書房新社 1500円+税)

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