フクシマから6年 政権が亡きものに葬ろうとする“あの記憶”
「フクシマ6年後消されゆく被害」日野行介、尾松亮著
本書の副題に「歪められたチェルノブイリ・データ」とある。実は福島第1原発事故以来、甲状腺がんが多発している。ところがわが国の政府関係者らは、唯一の先行例といってよいチェルノブイリのデータを歪曲し、幕引きを図っている。
そこで立ち上がったのが、新聞記者と災害研究者からなる著者2人。日本ではしばしば「チェルノブイリと比べると」が決まり文句になり、チェルノブイリより被ばく線量が少ない、チェルノブイリより甲状腺がんの発症率は低い、などといわれる。因果関係を否定する材料にチェルノブイリが使われているわけだ。
ところが肝心のこのデータが、実はしばしば歪められ、自分たちに都合のよいところだけを抜き取ったり、都合の悪いところを隠したりしているという。「被ばく線量がはるかに小さい」という報告が「総じて小さい」と言い換えられるなどは日常茶飯。そんな細部を見落とさない著者はどちらも70年代生まれの頼もしいアラフォー世代。(人文書院 1800円+税)