フクシマから6年 政権が亡きものに葬ろうとする“あの記憶”
「フクシマは核戦争の訓練場にされた」石井康敬著
ぎょっとするような書名だが、子どものころから米軍基地のそばで育ったというフリージャーナリストの著者が注目するのが3・11当時の米軍「トモダチ」作戦のその後。つい最近も「日米同盟」のもとでの感動秘話のごとくに伝えられたが、実は同作戦は米軍幹部からすれば核戦争下での被ばく線量などを実地に採集できる願ってもない機会とされていた。つまり人体実験だ。
著者が憂慮するのは3・11後に鈍感になった社会の空気。いまや米軍や自衛隊は化学戦や生物戦の除染部隊を公然と表に出して活動させているのに、疑問の声も批判もまったく起こらないというのだ。目を開き、耳をすませ続けることの忍耐を行間から説く。(旬報社 1500円+税)