北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「室町繚乱」阿部暁子著

公開日:  更新日:

 何げなく読み始めたらやめられなくなった。13歳の少女透子が髪を切って少年の格好になり、乳母と2人で敵地に乗り込んでいくというストーリーは、特に目新しいものではない。しかし、この長編にどんどん引き込まれていく。それは、出てくる人物がみな生き生きとしているからだ。

 たとえば透子は、京に入った途端、人買いにつかまってしまうのだが、それを助けるのが猿楽師の少年鬼夜叉と、若き将軍足利義満。透子は南朝の帝の妹なので、義満は仇敵になる。鬼夜叉も義満の庇護のもとにいるのだから、本来なら透子の敵方の一員になるのだが、何かあるたびにこの少年は透子を助けてくれる。

 義満ですら単純な悪党ではなく、しかしリアルな政治状況を背景にして彫りの深い男として描かれている。まだまだ脇役もいるのだが(鬼夜叉の弟四郎がたとえようもなくかわいい!)、あとは省略。

 透子がどういうわけか、義満の館に住むことになるというストーリーの展開と、南北朝の時代という複雑な物語の背景が徐々に立ち上がってくることと、怒涛のような激しい局面になる後半の面白さを指摘するにとどめておく。

 著者は年少読者向けの小説を書いてきた人で、一般書はこれが初めてのようだが、この作家の作品をもっと読みたいという気持ちがこみあげてくる。うまいうまい。(集英社 660円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    長野以外にGベテランリスト漏れ 広島“ポロリ発言”の波紋

  2. 2

    巨人ナインに深刻“長野ロス”…超気配り男の逸話伝説も数々

  3. 3

    裏交渉も暴露され…ロシア人も哀れむ安倍政権“土下座”外交

  4. 4

    自公3分の2圧勝シナリオ 1.28通常国会“冒頭解散説”急浮上

  5. 5

    海老蔵は“秒読み”? 没イチ男性が死別再婚する時の注意点

  6. 6

    仏当局捜査“飛び火”か 五輪裏金疑惑で日本政界が戦々恐々

  7. 7

    また生え抜き看板…巨人“大チョンボ”長野流出の真相と波紋

  8. 8

    初登場G球場で“孤独トレ” 丸は巨人で「我」を貫けるのか

  9. 9

    アニキが勧誘も…前広島・新井が「阪神コーチ」断っていた

  10. 10

    経団連会長が転換 「原発どんどん再稼働」に飛び交う憶測

もっと見る