著者のコラム一覧
笠井潔

1948年、東京生まれ。79年、デビュー作「バイバイ、エンジェル」で角川小説賞受賞。以後、ミステリー、思想評論、探偵小説論など幅広い分野で活躍。主な著書に、「サマー・アポカリプス」他の矢吹駆シリーズ、伝奇ロマン「ヴァンパイヤー戦争」シリーズなど。

伴侶をなくすと自宅が凶器と化す

公開日: 更新日:

「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」河合雅司著/講談社 840円+税

 前著「未来の年表」で「人口減少カレンダー(2017年~2063年)」を提示し、世に衝撃を与えた著者による続編。カレンダーの2018年の項には、たとえば「75歳以上人口が『65~74歳』人口を上回る」とある。2015年に1億2700万人だった人口は、40年後には9000万人、100年後には5000万人まで減少する。

 人口学的に大変な事態が起きようとしているにしろ、その意味するところが素人にはいまひとつピンとこない。人口減少社会はわたしたち一人一人の暮らしに、どのような影響をもたらすのか。本書ではそれが、「人口減少カタログ」として具体的に描かれている。

「これからあなたに起きること」の第1は、「伴侶をなくすと自宅が凶器と化す」だ。高齢者の一人暮らしが増加し、自宅でのケガや死亡事故が頻発するようになる。第2は「亡くなる人が増えるとスズメバチが急増する」。放置された空き家で増殖したスズメバチが人々を襲いはじめる。

 本書で列記される「人口減少カタログ」から、興味深い項目をさらに書きだしてみよう。第5「食卓から野菜が消える」、第9「中小企業が黒字でも倒産」、第12「東京で遅刻者が続出」、第14「ネットで買った商品が一向に届かない」、第15「灯油が途絶え、凍え死ぬ」などなど。これらの事例は数年から10年程度の近未来に、多かれ少なかれ現実化するだろう。

 人口減少社会の到来は「国難」だと、著者は繰り返し語る。「国難」を乗り越えて「賢く縮む」社会を構築するには、抜本的な対策が不可欠だが、わたしたちに残された時間は限られていると。政府が有効な対策を講じようと講じまいと、日本国が浮こうと沈もうと、わたしたちは生きていかなければならない。人口減少社会を生き延びるためのサバイバル・マニュアルとしても、本書は有益である。

【連載】貧困と右傾化の現場から

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か