著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

ヨウ素剤は「必要なときに正しく飲めるように備えておく」ことが重要

公開日: 更新日:

 8月6日は、80回目の「原爆の日」です。広島に在住する私にとっても特別な1日となります。また、私事ですが父の80回目の誕生日でもあります。

 さて、放射能や放射線のニュースでは必ずといっていいほど「被曝」という言葉が登場します。今回は被曝予防として用いられる「安定ヨウ素剤」(ヨウ化カリウム)についてお話しします。

 原発事故では、放射性ヨウ素が大量に環境中に放出されることがあります。体に入ると甲状腺に集まり、がんなどの原因になります。それを防ぐのがこのヨウ素剤の役割です。仕組みはシンプルで、あらかじめ体内に安定したヨウ素を満たしておくことで、放射性のヨウ素を取り込みにくくするというものです。いわば「先に甲状腺を満タンにして、悪いヨウ素が入らないようにする」わけです。

 この効果は服用後24時間は持続するとされており、放射性ヨウ素に暴露される24時間前から、暴露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することで、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができるとされています。また、暴露後8時間であっても約40%の抑制効果が期待できます。

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