「人間狩り」犬塚理人著

公開日: 更新日:

 物語の発端は、20年前に起こった小学生女児殺人事件。

 被害女児の自宅に、少女の両目が送り届けられるという残忍な事件で、加害者となった14歳の少年の家からは、犯行の様子を記録した映像が押収されていた。しかし、20年もの月日を経て、その映像が闇オークションに出品されるという事件が起こる。人事第一課監察係の白石は、捜査関係者による映像の持ち出しを疑い、当時捜査にかかわった捜査関係者の周囲を探っていく。一方、ネット上でも事件は話題となり、犯人捜しをする自警団が動き始めたのだが……。

 第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。少年法によって守られ社会復帰を果たしていたかつての凶悪犯を巡るさまざまな人々の複雑な思いが、克明に描かれている。

 正義の名のもとにネットに集まる自警団は、社会にどんなインパクトを与えていくのか。匿名の人々がネットを介して暴走する危険性をあぶりだした、極めて現代的なテーマ設定が興味深い。

(KADOKAWA 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑