「脚本家 市川森一の世界」市川森一論集刊行委員会編

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 1970年代半ばから80年代にかけてはテレビドラマの黄金期であり、同時に、橋田寿賀子、向田邦子、早坂暁、山田太一、倉本聰、市川森一らのドラマ作家たちが活躍した「脚本家の時代」でもあった。本書は、そうした黄金時代の一翼を担った市川森一の足跡と業績を、市川と親交の深かった人たちの思い出とともにつづったもの。

 市川の脚本家デビューは1966年の「快獣ブースカ」。以後ウルトラマンシリーズなどの子供向けドラマの脚本を手がけたが、その名を一躍知らしめたのはショーケンこと萩原健一が主演した「傷だらけの天使」だ。70年安保後のアナーキーな青春群像を描き、伝説的なドラマとして語り継がれている。後続の脚本家に大きな影響を与えたのは「淋しいのはお前だけじゃない」。三谷幸喜の「王様のレストラン」と宮藤官九郎の「タイガー&ドラゴン」はこの作品へのオマージュだ。

 その他、NHK大河ドラマの「黄金の日日」の思い出を松本白鸚が語り、同郷の役所広司が市川と長崎の思い出を語るなど、市川の多面的な活躍ぶりを伝えてくれる。読み進めるうちに、懐かしきテレビドラマの世界がよみがえってくるのも楽しい。

(長崎文献社 2800円+税)

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