著者のコラム一覧
北尾トロノンフィクション作家

1958年、福岡市生まれ。2010年にノンフィクション専門誌「季刊レポ」を創刊、15年まで編集長を務める。また移住した長野県松本市で狩猟免許を取得。猟師としても活動中。著書に「裁判長! ここは懲役4年でどうすか 」「いきどまり鉄道の旅」「猟師になりたい!」など多数。

「レスラーめし」大坪ケムタ著

公開日: 更新日:

 あのレスラーは何をどれだけ食って大きく、強くなったのか。プロレスファンなら一度は思う素朴な疑問を、当事者たちに直球でぶつけたインタビュー集が登場。オカダ・カズチカ、小橋建太、前田日明、武藤敬司から天龍源一郎、長州力、藤原喜明、さらには女子プロレスラーも加えた15人が、若き日の食いっぷり、飲みっぷりを振り返る。話の端々に団体トップだったジャイアント馬場やアントニオ猪木の逸話も入り込んでくるわけで、これが面白くないわけがない。

 プロテインなど使わなかった時代、“レスラーめし”の基本は相撲と同じく、ちゃんこ。相撲出身の力道山が導入し、定着したらしいが、若手時代は練習とちゃんこ番に明け暮れ、とにかく食べて体重を増やすことが求められた。ただし、相撲は魚介系ちゃんこが多いが、プロレスは圧倒的に肉。そして米だ。

「1日にご飯30杯くらい食べてたのに脂肪なんかつかなかった」(小林邦昭)

 死ぬほど練習し、死ぬほど食べ、プロレスというハードな戦場で通用するカラダをつくるのである。特に新日本プロレスは、鬼軍曹の山本小鉄が「飯の食えないやつは田舎へ帰れ!」と、竹刀を片手に目を光らせていたという。どんだけキビシイんだよ!

 ちなみに各レスラーの話を総合すると、ちゃんこ作りの名人は、キラー・カーン、藤原喜明あたり。酒豪となると、ウイスキーのボトルを一気飲みするような猛者揃いの中、多くがその名を挙げるナンバーワンは坂口征二か。

 プロレスラーは特別な存在だと子供の頃から刷り込まれてきたが、本書を読んで納得した。みんな若き日に必死に食べ、練習したからこそ、40代や50代でリングに立つことができるのだ。

 僕の思う最強レスラーは藤原喜明だ。今年70歳で、胃がんを克服し、今なお現役を張る。レスラーに定年はないのだ。

(ワニブックス1600円+税)

【連載】北尾トロの食いしん本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?